過熱するも市民は冷める横浜市長選挙で珍事連発 全候補取材から見えたものとは
8月8日告示、8月22日投票の横浜市長選挙も折り返し地点を過ぎた。
■独特な演説場所選び
田中氏ゆえの遊説場所選びがある。11日には大和市と横浜市にまたがる泉区のエスニックタウン「いちょう団地」で演説をした。神奈川新聞記者・カメラマン2人と、れいわ新選組の勝手連が現地にいた。
同団地はベトナムやボリビアなど11カ国以上の外国人が住む。有権者が少ない上に、横浜の外れにあるため、そこを訪れて演説する候補者は異例だ。田中氏は知る人ぞ知るベトナム料理の名店「タンハー」前にて演説を行った。
同地を選んだ理由を田中氏は「ここには、多くの日本以外で生まれられた、けれども、この日本の地で働くということを夢見て、そして定住をされて、新たな命も生まれて、この町に住んでらっしゃる方々がいらっしゃいます」と説明。
行政や政府は、多文化共生や多文化社会とかいう言葉を使うが、「そんな言葉を使わなくても、私は、この町には、そうした人の体温が伝わるものがある」と語った。
ちなみに、田中氏は聴衆と十二分に離れた距離をとって「マスクをとってもよろしいでしょうか?」と尋ねることから演説を始める。
■ネガティブキャンペーンは逆効果
取材した限り、私には横浜市民が候補者が乱立しているのに、選挙に対して冷ややかだと感じる。一番の理由はカジノ白紙で当選した林市長が市民の7割が反対なのにカジノ・IR誘致賛成へと寝返ったからだと思われる。
これは与野党に責任がある。2009年に林市長を担いだのは旧・民主党だ。その後、林氏を支援したのは自民党と公明党である。IR反対を訴える小此木氏も国会でIR実施法に賛成した過去がある。
誰もが市政を信じられず、政治不信を抱いている。そんな中で、相手候補を批判・罵倒したり落選運動を展開したりするのは、政治不信を促すことはあれ投票する動機にはなり得ない。
米国共和党の2008年大統領候補だった故・ジョン=マケイン上院議員(当時)は対話集会で「オバマは信用できない。彼はアラブ人だ」と女性が発言するや、「違います。彼は家族を愛するまっとうなアメリカ市民です。彼と私はたまたま基本的な事柄について意見が異なるだけです」と諭した。
いま必要なのはマケイン氏のようなフェアプレーの精神だ。それは五輪の精神でもある。投票日が8月22日の横浜市長選。公正な議論が行われ、信じられる未来を思い、有権者一人ひとりが投票されることを、世界都市・横浜を愛する一人として切に願う。
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(取材・文/France10・及川健二)