宗教学校のカーペットを汚し… 8歳男児が「冒涜罪」で起訴され暴動に発展
騒動をきっかけに、少年が暮らしていた地域ではイスラム教徒が暴徒化して寺院を急襲。火を放つなどした。
パキスタンでこのたび、8歳の少年が宗教を冒涜(ぼうとく)したとして起訴された。両親の姿も見えなくなっており、精神的に未熟な8歳児に対し、そこまでする必要が果たしてあるのかと、波紋を広げている。
裁判にかけられる年齢として、パキスタンでは最年少となることを『NEW YORK POST』『The Guardian』などが報じている。
■宗教書が並ぶ図書館で…
パキスタンで今、パンジャブ州ラヒムヤルカーン地区に家族とともに暮らしていた8歳の少年が、被告人として法廷に臨むことを求められている。
少年は、ヒンドゥー教徒のためのマドラサと呼ばれる宗教学校に通っていた。職員たちは警察に「神聖なる宗教書が並ぶ図書館で、少年による許しがたい冒涜行為があった」などと説明しているという。
■人権活動家が動き出す
少年は、図書館のカーペットを自分の尿で汚していた。我慢を続けた末の「おもらし」だとは認められず、職員たちは意図的な放尿だと判断していた。
少年の身柄が拘禁されて1週間ほどになるが、現地メディアは「それと同時に家族の姿も見えなくなっている」と報じている。第三者により安全な場所でかくまわれている可能性が高いといい、海外の人権活動家が今、少年の起訴を取り下げるよう各方面に求める活動に入っている。
■イスラム教徒が暴徒化
パキスタンではかつて、冒涜罪で多くの成人に死刑が下っていた。また死刑を免れても、集団による暴行を受けて命を落とす者が少なくないという。
なお、この事件をきっかけに同地区ではイスラム教徒が暴徒化。ヒンズー教寺院を襲って火を放つなどし、7日に20人ほどが逮捕された。イムラン・カーン首相は、政府が寺院を修復することを約束している。
■住民を失ったコミュニティ
パキスタンにおける宗教信者の割合は、イスラム教が96%、ヒンドゥー教とキリスト教がそれぞれ1.6%ずつと考えられている。
宗教的マイノリティのヒンドゥー教徒は、ささいなことで逮捕されるなど悔しい思いが続き、同士の結束だけは固いと信じられていた。それだけに、少年の一家を含む100世帯以上が暮らしていたヒンドゥー教徒のコミュニティは、現在もぬけの殻となっている。
ある親族は避難先でメディアの取材に応じ、「8歳の子供が裁判にかけられ、寺院は放火された。あの土地は恐ろしくて戻りたくない」などと話しているという。
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(文/しらべぇ編集部・浅野 ナオミ)