「温暖でスポーツに理想的な夏」の実態は猛暑と台風 海外から東京五輪に不安の声
海外からは「とんでもない嘘をついた」といった批判の声まで相次いでいる。
何が何でも開催するという主催者側の強い意気込みに、半ば押し切られるような形で開催された東京五輪。
しかし、うだるような猛暑は海外から来た選手団や関係者を苦しめ、福島で起きた震度4の地震や接近する台風、それに絡む暴風雨は強い不安をもたらしていると海外主要メディアが伝えている。
天変地異は誰も敵わず恨みようのないものだが、今回だけは、それとは異なる感情も渦巻いている。五輪招致活動で日本がついた嘘を批判する声が上がっているのだ。
■高温多湿に台風まで
テニスのジョコヴィッチ選手たちが「想像よりはるかに高温多湿。試合開始は夕方以降にしてほしい」と苦情を入れたほど、過酷な東京の猛暑。
『Forbes』『ニューヨーク・タイムズ』『Voice of America』『abc News』『ワシントン・ポスト』『シドニー・モーニング・ヘラルド』などは、それに加えて今、台風8号の接近でボート、アーチェリーやセーリングの競技日程が変更になったことを報じている。
宮城県で27日に行われるサッカー女子1次リーグ2試合も、JR線の運休を視野にボランティア活動が中止となったほか、貴重な有観客試合と言われながら、その数が大幅に減る可能性があるようだ。
■熱中症で倒れたロシアの選手
なかでも『Voice of America(VOA)』の「Typhoon May be Latest Challenge for Already Strange Tokyo Olympics(すでに東京五輪は十分異様だが、最新の脅威は台風か)」という記事は、多くの注目を集めている。
日中の最高気温が摂氏33度にもなる蒸し暑さのせいで、選手団は熱中症対策のクールベスト(冷却服)、うちわ、日傘などを携帯しているといい、しかし23日のアーチェリーでは、ロシアのスベトラーナ・ゴムボエワ選手が熱中症で倒れた。
専門家も「東京は五輪史上最も暑い開催地の1つ」と驚いているという。
■「札幌も恐ろしいことに」
野球・ソフトボール競技が行われる福島県では、18日夜に震度3、27日早朝に震度4の地震を記録している。地震も日本、東京を語るうえで大きな懸念材料であり、オーストラリアの『Courier Mail』をはじめ、多くのメディアが「地震を経験したことがないアスリートは震え上がっている」などと伝えている。
また、8月には札幌でマラソンや競歩が行われるが、その札幌も今から連日気温が摂氏30度を超えている。エアコン室外機の熱風が吹き荒れるありさまに選手団も関係者もウンザリという状況を、中東の『アルジャジーラ』は「恐ろしいことになるだろう」と報じている。
■「日本は嘘をついて五輪を招致」
昨年6月から9月にかけ、日本では東京を中心に熱中症で112人が死亡し、64,869人が救急搬送されたことに触れたのは『Japan Today』。その記事には、30を超えるコメントが並んだ。
「1964年の東京五輪は猛暑を避け10月に開催されたのに」という声には、「日本側は今回も10月にと望んだが、IOCが7~8月にこだわり却下した」という声があがり、やや救われた感がある。
だが目立つのは「これのどこがアスリートファーストなのか」「東京の夏は温暖でアスリートにとって理想的な環境だ、などと嘘をついて日本は招致に成功していた」といった批判の声だ。
今の日本はもう踏んだり蹴ったりの状態だが、同情のコメントは見つかってはいない。
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(文/しらべぇ編集部・浅野 ナオミ)