東京を見て懲りごり? 米・経済学者「IOCボロ儲けで旨味ゼロの五輪を世界が拒み始めた」

五輪の魅力と威厳を正しく維持したいなら、IOCは大幅に方針を転換せよと米・経済学者。

2021/07/25 18:40

オリンピック・東京五輪

2016年の『オリンピック経済幻想論 2020年東京五輪で日本が失うもの』ほか、3冊の五輪関連著書を持つ、アメリカの経済学者アンドリュー・ジンバリスト(Andrew Zimbalist)氏。

開催国の負担が増す一方、国際オリンピック委員会IOCや独占放映権を持つNBCユニバーサル社はボロ儲け、という現状を批判してきた1人だ。

そのジンバリスト氏が、このほど「パンデミックは関係ない。平時であろうとすでに殆どの国が五輪開催への意欲を失っている。ICOが方針を変えない限り、五輪は衰退の一途をたどるだろう」と指摘。

ニューヨーク・タイムズ/DealBookは24日、同氏の見解を紹介しながら『もはや五輪開催にはロクな旨味がない』との記事を掲載し、注目を集めている。


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■最大の犠牲を払う日本

新型コロナウイルスのパンデミックに見舞われたことで、1年の延期を余儀なくされ、日本国民のワクチン接種率の低さや、感染力の強いデルタ株の流行など、さまざまな問題を抱えたなかで開幕された東京五輪。

殆どの会場が無観客という大赤字を開催国が背負いこむことに、「日本だから何とかなるだろうが大変だ」と同情を寄せる世界の人々。しかし「あなたの国もいずれは五輪を開催したいか」と問われれば、ほぼ全員が「ノー」と答えるそうだ。

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■1年延期の高額経費に反論

公正、公平、平和を理念に世界各地で開催されることが理想とされながら、経済大国をアピールしたい国以外、開催国の名乗りを上げないイベントになっていると糾弾するアンドリュー・ジンバリスト氏。

米マサチューセッツ州スミス大学でスポーツ経済学を教える同氏は、昨年7月、五輪の1年延期に伴い発生する数千億円もの経費について「なぜそんなにかかる。減額し、IOCが半額を負担すべきだ」と発言して話題になった。

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■2026年と2032年の開催地は?

2022年冬は北京、2024年夏はパリ、そして2028年夏はロサンゼルスで五輪が開催される予定だが、それらも互角に争える強力なライバルがいたわけでもなく、2026年冬の開催地はいまだ決まっていない。

ジンバリスト氏によれば、2032年夏の五輪は、下手すればどこも名乗りを上げない可能性があるとのこと。ネックになるのは、やはり膨大な経済負担。東京が払わさせられる犠牲の大きさだ。

この東京五輪の経費総額については、警備、輸送などを除き当初は73億ドル(約8,070億円)ほどと見積もられていたが、実際には280億ドル(約3兆955億円)に膨れ上がるという。無観客でこの出費を強いられるとは、あまりにも痛すぎる。


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■改善点をIOCは受け入れるか

IOCに重要な改善点は、開催国の負担額をとにかく減らし、むしろ多くの収入が入るシステムにすることと、いかなる感染症パンデミックが発生しても中止や延期を違反と捉えず、損害賠償金や違約金を求めるようなシステムをなくすことだとジンバリスト氏は指摘する。

ただし、それらはIOCにとっての大幅な減収減益につながるため、彼らが首を縦に振るかはかなり怪しいとしている。


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■おもてなしの強要をやめよ

内部告発も含め、あらゆる情報が瞬時に世界を駆け巡るこの時代、バッハ会長とジョン・コーツ副会長が、このたびの東京五輪でどれほど極上の贅沢を味わっているか、それを疑う者はいない。

バッハ会長の出身国ドイツでは、多くの人が「ぼったくり男爵と呼ばれるなど、とても恥ずかしい」と嘆いているが、五輪招致活動の際にIOCが各国の招致委員と密室でやりとりをし、この上ないおもてなしを約束させることの卑怯さについてもジンバリスト氏は糾弾。

「これでもまだ、自分の国でぜひ五輪をと招致に意欲を燃やす国はあるのでしょうか」と疑問を投げかけている。

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(文/しらべぇ編集部・浅野 ナオミ

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