歯科治療中に体調急変の3歳児が死亡 通常の施術を担当した歯科医もショック
その小児歯科には複数の歯科医がおり、個人としては市内最大規模で、口腔外科としての設備も整っていた。
アメリカ・カンザス州の小児歯科で、3歳の男の子が抜歯を行った後、体調に異変をきたして死亡した。「ごく普通の治療だと言われていたのに…」と涙ながらに話す遺族。『WGN9 News』『KWCH12 News』ほか、『PEOPLE』などの海外メディアが報じ、波紋が広がっている。
■紹介され大きな小児歯科へ
亡くなったのは、カンザス州スコット郡のスコットシティーに暮らし、来月4歳になるところだったアビエル・ヴァレンズエラ・ザパタくん。
メディアの取材に応じた母ナンシー・ヴァレンズエラさんは、「息子は下の歯が歯周病にかかり、地元の歯科医に相談したところ抜歯が必要との判断でした。そこで紹介され今月6日、ウィチタ市郊外にある小児歯科の『タイニー・ティース小児歯科』で治療を受けたのです」と話している。
■治療の手順は正しかった
しかし、抜歯前の麻酔注射を打たれて30分ほどするとアビエルくんの頬が腫れ始め、脈がひどく遅くなったことから、歯科医は重いデンタルショックと判断して救急車を要請。大きな病院で心肺蘇生のあらゆる処置が試みられたが、アビエルくんが目を覚ますことはなかった。
ナンシーさんは「我が子に何が起きていたのか、正しい答えを待っているところです」と話し、医療過誤の疑いもあるとして詳しい調査を依頼。アビエルくんの検死と並行し、警察が歯科医のカルテなどを調査しているが、現時点で治療の手順に不審な点は見つかっていないという。
■4年前には日本でも
その小児歯科は大型で複数の医師がおり、口腔外科としての設備も整っていることから、多くの小児患者を受け入れてきた実績がある。医師は「アレルギー体質ではない小児で、こうした例は経験したことがない」と話しているという。
日本でも福岡県の歯科医院で2017年7月、当時2歳の女の子について同様の症例が大きく報じられた。死因は司法解剖を経て、局所麻酔薬リドカインへの急性中毒反応で低酸素脳症が起きたためと示された。
世界で最もひんぱんに使用されているリドカインであっても、幼児、高齢者など薬剤の代謝能力が低い患者では過量投与の状態になることがあり、極めて稀には低酸素脳症が起きるという。
■侮れないデンタルショック
歯科治療において、何かが引き金となって患者に起きる各種の体調不良は、デンタルショックと呼ばれている。その福岡県の事故以来、多くの歯科医がホームページなどを通して、各種の症例を挙げながら丁寧に説明。麻酔を使用した治療について理解を求めるようになっている。
血管迷走神経反射、過換気症候群、局所麻酔薬中毒、局所麻酔薬の成分に対するアレルギー(アナフィラキシーショック)などに大別されるといい、気になることがある場合、麻酔注射を打つ前に歯科医に相談することが望ましいそうだ。
なお、血管内に針を刺し麻酔薬を注入するミスも低酸素脳症の原因になるという。
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(文/しらべぇ編集部・浅野 ナオミ)