東京五輪の“パンドラの箱”に触れたNYタイムズ 「大地震が起きたらどうなるの?」
日本では各自治体、職場、教育施設などが定期的な避難や救助の訓練を行っているが、他国はそうではない。
千葉県館山市で先月15日、深海魚のメガマウスザメが目撃され、「このサメが現れると近いうちに大地震が…」と話題になったことをご存じだろうか。
新型コロナウイルスがあわや大流行かという不安をはらんだまま東京五輪が開催されようとしているが、この国にはもう1つ忘れてはならない懸念材料がある。いつ来るかわからない「大地震」だ。
五輪開催を前に、決して触れられたくない「パンドラの箱」ともいうべきその話題に触れたのは、アメリカの『ニューヨーク・タイムズ』だった。
■世界が衝撃を受けた東日本大震災
ニューヨーク・タイムズ紙・電子版が数日前に放った『Tokyo Says It Is Ready for Covid-19. What About Earthquakes?(東京五輪のコロナ対策は万全だと彼らは言う。では、大地震はどうなんだ?)』という記事が今、ツイッターを通じ、英語圏の人々の間でじわじわと波紋を広げている。
2011年の東日本大震災では、津波、家屋の倒壊、大火災、そして福島第一原子力発電所事故と、まさに地獄絵図の惨状が映像や写真で世界に広く伝えられた。
■地震の経験は人それぞれ
「近いうちに首都直下型の大地震が来る」と繰り返されながらも、なかなか起きず、エネルギーが蓄積していることへの底知れぬ恐怖。危険視されている東京湾、相模湾、千葉県沖のどこが震源地となっても、東京は壊滅的な被害を受けるだろう。
ニューヨーク・タイムズは、「もしも東京五輪の開催中に大きな地震が発生したら、それこそ最悪なシナリオだ」と報じている。日本は各自治体、職場、教育施設などが定期的な避難や救助の訓練を行っているが、他国はそうではない。
地震などまず起きない国から来た人たちは、小さな地震で青ざめ、震度4の地震ではパニックを起こす可能性すらあるというのだ。
■津波を侮るなかれ
地震に強い耐震・免震構造のビルを建設する技術は、日本の売りでもある。東京湾の海抜ゼロメートル地帯に建設された五輪用施設を含む無数のビルについても、土壌の液状化現象を防ぐ対策や耐震補強工事は「万全だ」と説明されてきた。
だが東日本大震災を通じて、多くの外国人が津波の驚異的な破壊力を知っている。ニューヨーク・タイムズのその記事は、多言語の外国人が集まる五輪会場でパニックが起きれば、まるで統率が取れなくなるだろうと予想している。
なお競技中に震度4以上の地震が発生した場合、いったん競技を中断して、各エンジニアが施設の安全状況をチェックして回ることになるという。
■もしも本当に起きたら…?
「地震です。落ち着いてください」などというアナウンスひとつで、選手たちは集中力を奪われ、張り詰めた緊張の糸が切れてしまう。それが睡眠中なら、神経質なアスリートは眠りに戻れなくなる可能性もある。地震がきっかけで100%の力を発揮できないとなれば、不本意でならないだろう。
しかし、本当に大地震が起きてしまったらどうなるのか。五輪中止はもちろん、ほとんどの交通網やライフラインが止まり、外国人選手や関係者は祖国に帰ることもままならなくなる。
そのとき彼らは日本、東京、IOCを「なぜ近い将来、大地震が起きると予想される国で五輪を開催したのか」と猛烈に批判することだろう。
IOCの最古参委員であるディック・パウンド氏の「アルマゲドンでも起きれば中止になる」発言が現実のものとならないことを、とにかく祈るのみだ。
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(文/しらべぇ編集部・浅野 ナオミ)