「ワクチンで安全安心な五輪」はもう通用しない 接種完了者のデルタ株感染相次ぐ
ワクチン接種率世界ナンバーワンのイスラエルで、デルタ株感染者が急増。2回目の接種が済んだのに…。
五輪の開催について、日本政府は幾度となく「安全安心の鍵を握るのはワクチン」と繰り返してきたが、新型コロナウイルスの変異株「デルタ」が出現して以来、ワクチンの過信は禁物だ。
接種率が群を抜いて高い国こそが、その大きな警鐘を鳴らしているという。英米の複数のメディアが伝えている。
■接種完了後に感染
25日現在、人口の56.9%が新型コロナワクチン接種を2度とも完了したというイスラエル。世界首位でありながら、同国の保健省はその日、国民に再びマスクの着用を義務付けた。
ワクチン未接種の未成年者の間で、インド型変異株デルタの感染が広がり始めたためだが、『ウォール・ストリート・ジャーナル』によれば、感染した成人の約半数がファイザーのワクチンを2度接種していたというのだ。
■豪で再ロックダウン
デルタ株の感染力の強さは、大都市がありながら珍しくコントロールされていたオーストラリアをも変えてしまった。シドニーを擁するニューサウスウェールズ州は、人気の美容室からクラスターが発生したことを受け、今再びのロックダウン(都市封鎖)に入っている。
こうしたことを受け、世界保健機関(WHO)ジュネーブ本部は25日、「ワクチン接種が完了した人でも安全ではない。必ずマスクを着用し、手洗いと消毒を励行し、ソーシャルディスタンスを守るように」と呼びかけを行った。現在少なくとも92ヶ国で感染が拡大しているという。
■「接種後も気を緩めないで」
『NBC』『CNN』などが報じたところによれば、アメリカの疾病予防管理センター(CDC)は25日、国民に向け「ワクチン接種が完了した人にもデルタ株は感染することがわかった。誰もがこれまで通りの対策と警戒を」と呼び掛けた。
また、ロサンゼルス郡で入院あるいは死亡するコロナ患者のほとんどが、ワクチン未接種の人々だといい、専門家は「予防に100%の効果を発揮するワクチンは存在しない。ただし、接種により重症化する率が下がる可能性がある。どうか積極的に接種を」と訴えて続けているという。
■体調やパフォーマンスへの影響を懸念
アメリカでは、「ワクチンの副反応はパフォーマンスの低下につながる」「ワクチンの長期的な影響は未知」と話し、あえてワクチンを打たないと宣言するNFL選手たちが話題になっていた。
ところが『CNN』は、2回目の接種で体調を崩すという理由で、一般人でも二の足を踏む人がいることを伝えている。ファイザーまたはモデルナのワクチンに最初は飛びついたものの、10人に1人かそれ以上が、2回目の接種に現れないままだという。
集団免疫の獲得のためには最低でも70%、理想は85%が接種を完了することが望まれるというアメリカだが、25日現在その割合は45.4%だ。
■五輪選手にも強い警戒心
ワクチンへの強い警戒は、アメリカ人に限ったことではない。なんと、イギリスでは五輪の代表選手においても同じことが起きていたようだ。
『The Guardian』は、英国オリンピック委員会のアンディー・アンソン氏の話として、五輪行きが決まっても接種を拒む選手が一定数いると報じている。
それにしても、日本の五輪ボランティアや各国の接種を拒んできた選手たちに今から接種して、果たして大会までに免疫獲得はかなうのか。「間に合うわけがない」という声は増える一方だ。
・合わせて読みたい→疑問だらけの米国五輪選手団来日 渡航禁止令の弱体化や旅行保険への影響も懸念
(文/しらべぇ編集部・浅野 ナオミ)