新型コロナ治療後の「ムーコル症」がインド以外でも 眼球摘出と高い致死率
新型コロナ治療の酸素吸入で使用される加湿瓶の不衛生さ、ステロイド剤の過剰投与などが原因だという。
インドでは、新型コロナウイルス感染症の治療を受けた患者が、その後に「ムーコル症」という別の疾患を発症することが問題になっている。致死率の高さで知られるそのムーコル病が、ついにインド以外でも広がり始めたようだ。
イギリスの『Mirror』、アメリカの『NEW YORK POST』など海外のメディアが続々と報じている。
■危険な「黒い真菌」
かかれば致死率は新型コロナウイルス以上に高く、眼球摘出を余儀なくされる例もあるため、非常に恐れられている真菌症の「ムーコル症」。英語圏では「black fungus(ブラック・ファンガス/黒い真菌)」とも呼ばれている。
インドでは、新型コロナウイルス感染症から回復した患者のうち、すでに1万人以上がそのムーコル症を発症したという。
■基礎疾患のある方は要注意
ムーコル症は、糸状菌リゾプス・オリゼなどへの感染が原因で、湿度の高い環境で発生。臓器移植を受けて免疫抑制剤を飲み続けている人、血液疾患、悪性腫瘍、糖尿病の患者など、そもそも免疫力が低下している人たちが発症しやすいとされている。
そのムーコル症が、ついにインド以外でも確認された。チリ、ウルグアイでもやはり新型コロナの治療を受けた患者の間で発生し、急激な広まりに警戒感が募っているという。
■治療の抗真菌薬が不足
インドの場合、新型コロナ治療の酸素吸入時に使用される加湿瓶の不衛生さを指摘する声もあるが、ステロイド剤の過剰な投与で免疫力を低下させしまうことも、発症の大きな原因と考えられている。
ムーコル症の治療に、インドでは抗真菌薬の「アムホテリシンB」が用いられており、その不足によりグジャラート州が緊急事態に陥っているほか、ウッタルプラデーシュ州、マディヤ・プラデーシュ州、マハーラーシュトラ州でも供給が追いつかない状態だという。
■発症した半数が死亡
ムーコル症の多くは呼吸症状に苦しむが、その後に心配されるのが「鼻脳型」だ。顔、副鼻腔に痛みが現れ、眼球が収まっている骨のくぼみの脂肪組織に「眼窩蜂窩織炎」という炎症が起きた場合は、かすみ目や物が二重に見えるようになり、眼球摘出が必要になるケースも少なくないそうだ。
なお、米・疾病予防管理センター(CDC)はムーコル症の致死率を54%と示している。新型コロナウイルスより10倍以上高いため、油断は大敵だという。
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(文/しらべぇ編集部・浅野 ナオミ)