SWASH緊急寄稿 「新聞が風俗撲滅を扇動した日、一人の少年が風俗嬢を殺した」
容疑者の少年は、犯行動機の一つとして、「風俗業は少子高齢化の歯止めに役立っていない」という趣旨を話しているという。
2021/06/03 23:05
1日、東京立川市のシティホテルで19歳の少年が30代女性と助けに来た男性を殺傷。
逃走した少年は昭島市で逮捕されたが、未成年の容疑者が匿名報道されているのに対して、いわゆるデリバリーヘルスに勤務していた被害者の女性は実名を報じられ、それによってSNSなど個人情報が特定されるといった状況に批判も集まっている。
セックスワーカーの活動団体『SWASH』代表を務める要友紀子さんは、こうした報道のあり方にいち早く警鐘を鳴らしていた。そこでニュースサイトしらべぇでは、要さんからの緊急寄稿を以下に全文掲載する。
■新聞を彩る風俗差別記事
朝日新聞が「性風俗に給付金なし、差別か助長防止か 真の支援の道は」と題された風俗撲滅を唱える記事を掲載したその日の午後、一人の少年が風俗嬢を殺し、風俗店従業員の男性を刺した。 私はこの出来事が偶然が重なりあった産物とは思えない。
事件が起こった日の朝日新聞に掲載された風俗差別記事は、朝日のお家芸ともいえる反セックスワークのプロパガンダだ。
朝日新聞および朝日系列のメディアの数々は長年に渡って、セックスワークのネガティブキャンペーンともとれる記事やコンテンツを量産し続けている(多くの批判も無視し続けている)。
■社会的差別が生む被害者
事件が起こった日の唾棄すべき記事も、こうした体質から生み出された必然的な記事の一つに過ぎない。 風俗嬢を殺した少年は、犯行動機の一つとして、「風俗業は少子高齢化の歯止めに役立っていない」という趣旨を話した(6月3日現在)。
社会の問題を風俗/風俗嬢の存在のせいにしたいという考えは、朝日を含む一部メディア報道や社会にある風俗に対する差別意識そのままだ。
マッサージ師やカウンセラー、占い師等個室で働く様々な対人サービス業がある中で、少年にとって、殺す相手が風俗嬢でなければならなかったのは、こうした社会的な差別による必然性があった。