妊娠中のアセトアミノフェン服用も子の自閉症・ADHDの一因に 7万人に大規模調査
「妊娠中や授乳中でもアセトアミノフェンは安全に使用できる」と日本でも謳われてきたが…。
2019年頃から注目を集めるようになった、風邪薬や解熱鎮痛薬のアセトアミノフェンを妊娠中の女性が摂取すると、生まれる子供の注意欠陥/多動性障害(ADHD)や自閉症スペクトラムの発症率が高まるという説。スペインで大々的な調査が行われ、このほどその結果が発表された。
『IS Global』『Health Europa』などが報じ、子育て世代の大きな関心を集めている。
■2019年には臍帯血で調査
2019年10月末、ジョンズ・ホプキンス大学ブルームバーグ公衆衛生学部の研究チームは、ボストン大学ボストン医療センターで出産した996組の母親と子供について、胎児期のアセトアミノフェン摂取量を臍帯血により調査した。
そのうえで、彼らは医学誌『JAMAサイキアトリー』に「妊娠中のアセトアミノフェン使用で、生まれる子供がADHDや自閉症スペクトラムを発症するリスクが、摂取量により2.1~3.6倍高まる可能性がある」と発表。調査の数が少ないとはいえ、波紋を広げていた。
■そこで7万組以上を調査
妊婦がアセトアミノフェンを摂取すると、生まれてくる子供にADHDや自閉症が現れやすくなるというのは本当なのか。
この疑問について大々的な調査を進めていたのは、スペインの「バルセロナ・グローバルヘルス研究所(The Barcelona Institute for Global Health/IS Global)」。
イギリス、デンマーク、オランダ、イタリア、ギリシャ、スペインの6 つの地域で、調査は計73,881人の子供を対象に行われた。これほど大規模なコホート調査が行われたのは初めてだという。
■妊娠中の服用経験で差
IS Globalによるその調査の結果が、このほど査読付き医学誌『European Journal of Epidemiology』に掲載された。
自閉症スペクトラム、あるいは注意欠如・多動症(ADHD)と診断された子供について、6つの地域で14~56%と差が出たものの、妊娠中にアセトアミノフェンを服用していた母親が少なくないことが判明。
服用者の子供が自閉症スペクトラムを発症する率は、非服用者の子供より平均19%高く、ADHDでは 21%高くなることもわかったという。
■「注意喚起が必要」
米国食品医薬品局(FDA)は、かねてから「どの種類の解熱鎮痛薬も妊娠中は避けるべき」とし、乱用に警鐘を鳴らしてきた。
妊娠中や授乳中でもアセトアミノフェンは安全だと謳われている国はじつに多く、この論文の責任者であるIS Globalのシルヴィア・アレマニー氏は、「本当に必要な時のみ最小限にとどめるよう注意喚起を行うなど、見直しの必要があります」としている。
また、これまで小児期の服用と自閉症スペクトラムの間には関連性がないとされてきたが、こちらについても詳しい調査が必要だという。
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(文/しらべぇ編集部・浅野 ナオミ)