「WHOは徹底議論を」 英米豪の有名医学誌で東京五輪開催反対の論文が続々発表
日本に飛んだ選手団や関係者が感染し、そのまま約200の国に帰国。これは世界にとっても最悪のシナリオだ。
東京五輪・パラリンピックの開催に向け、「新型コロナウイルス対策が十分とは言えない」と訴える論文が、アメリカの医学誌に掲載された。少し前にはイギリスの医学誌が、そしてこのたびはオーストラリアの医学誌が、開催そのものを再考するべきだという論文を掲載していた。
「海外からの観客受け入れは断念するも、大会は必ず開催される」という報道に驚き、立ち上がったのは日本の医療従事者だけではなかったのだ。
■4月にイギリスの医学誌が…
1840年に発刊という歴史を誇るイギリスの医学誌『BMJ(旧:ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル)』。ここに4月14日付で、キングス・カレッジ・ロンドン、エディンバラ大学の医師たちによる論文が掲載された。
日本のウイルス検査能力の低さ、ワクチン政策の遅れを見ても、大会の安全な開催など限りなく怪しい、ただちに考え直すべきだと訴える内容になっていた。海外の医師たちによるそうした動きが、今また活発になっているようだ。
■18歳未満は未接種で来日
アメリカの有名医学誌『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン』には、ニューヨークのマウントサイナイ医科大学、ミネソタ州ミネソタ大学公衆衛生学部・感染症研究政策センター、カリフォルニア大学サンフランシスコ校などの医師や研究者が、25日付で論文を寄せた。
日本のワクチン接種率がかなり低いことに加え、ほとんどの国で15〜17歳といった年齢の選手にはワクチンを接種しないことを挙げている。また海外参加者向けプレーブックの第2版にある「マスクは自前で」は、感染予防対策としてまるで評価できないとしている。
■検査率の低さと偽陰性の問題
さらにこのたびは、オーストラリア医学協会による医学誌『メディカル・ジャーナル・オブ・オーストラリア』も、25日付でニューカッスル・スクール・オブ・メディスン・アンド・パブリック・ヘルス大学の研究者による論文を掲載した。
彼らは、オーストラリアが1.5人に1人のところ、日本では11人に1人しかウイルス検査を受けていないことに触れ、実際の感染者数は報道より多いと疑っている。
また、海外参加者は日本到着の96時間前に2度のウイルス検査で陰性の証明書を提出する必要があるが、PCR検査の感度は7割で、迅速型の抗原検査はさらに感度が下がることを忘れてはならないという。
また来日後もウイルス検査は続き、日々1万人を超えるアスリートが選手村の専用検査エリアに集まる。それ自体が「密」であり、感染スポットとなる可能性があると指摘している。
■WHOはきちんと議論を
新型コロナウイルス感染症は、ワクチンの効き目が落ちる変異株が主流となりつつある。医師や研究者たちは、選手団や関係者が日本でそれに感染し、約200の母国に持ち帰ることを強く恐れている。
論文のなかで、多くが「世界保健機関(WHO)はこうした問題を真剣に議論するべきだ」と訴えていることも印象的だ。
WHOだけではない。この夏の東京五輪・パラリンピックに自国の選手団や関係者を派遣させることについて、「本当に安全なのか」とどの国においても倫理面、健康面の両面で真剣に議論してほしいものだ。
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(文/しらべぇ編集部・浅野 ナオミ)