国連とアメリカが「無理するな」と言えば東京五輪は中止に? WHOは当てにならず
ウイルスの変異が変異を重ね、まさかの「東京五輪株」が登場するのでは…? 東京五輪開催に心配は尽きない。
アメリカ国務省が24日、海外渡航に関する最新情報として、日本を「渡航の再検討を求める」から最も厳しいレベルである「渡航の中止を求める勧告」の対象国に引き上げた。夏の五輪でメダルを世界一獲得してきたアメリカの選手団が、もしも来日できなくなったとしたら…。
国連事務総長や五輪の法律に詳しい専門家のコメントにも軽視できないものがあり、東京五輪中止の動きが今また加速している印象がある。
■鶴の一声は誰が…?
新型コロナウイルスのパンデミックのなかでも、7月の東京五輪・パラリンピックの開催に強くこだわる日本政府と国際オリンピック委員会IOC。「鶴の一声」で開催を阻止できるのは、いったい誰なのかと話題になることが増えている。
日本の菅義偉首相よりも、権威を振るっているように見えるIOCのトーマス・バッハ会長やジョン・コーツ副会長。それなら、世界保健機関(WHO)や国連に期待するしかないという声まで出ていた。
■WHOや国連事務総長は?
7日、WHOの緊急事態を扱う部門の責任者であるマイク・ライアン氏は、記者会見のなかで「新型コロナウイルスにおける日本の危機管理能力を高く評価し、東京五輪・パラリンピックの開催に期待する」と述べ、反対派の人々を落胆させた。
だが、国連事務総長のアントニオ・グテレス氏は24日のWHO年次総会で、富裕国にばかり集まるワクチンの公平な分配をと訴えるなか、「340万人余りが死亡し、5億人の人々が失業。世界は今、新型コロナウイルスとの戦争状態だ」と発言。「戦争」という言葉は強いインパクトをもたらした。
■参加者の安全を一番に懸念
今の日本政府にとって、WHOライアン氏の「開催に期待」という発言は好材料だろうが、国連事務総長による「戦争状態」発言とアメリカ政府による「渡航中止勧告」は悪材料。さらに、フランスのラジオ局が紹介したスイス・ローザンヌ大学の教授でIOCの幹部役員でもあったジャンルプ・シャプレ氏のコメントにも、注目が集まっている。
それは「中止の権限は原則IOCにあるが、参加者の安全が真に懸念される場合は、開催都市が中止を決定してもよい。ネックになっているのはテレビの放映権だろう」という内容だった。
■やむなき理由なら受理
2009年に新型インフルエンザの担当外交官としてWHOとともに働き、五輪・パラリンピック大臣政務官を務めた豊田真由子氏も「開催権の返上」について触れた1人だ。そもそも、圧倒的にIOCに有利な内容だといわれる『2020年 第32回オリンピック競技大会開催都市契約』。豊田氏は、これのXI.解除の第66条「契約の解除」を挙げている。
そこには戦争、内乱、ボイコットなどを根拠に開催都市側から中止を申し出ることが可能とある。実際に1940年の招致が決まっていた東京オリンピックは、日中戦争のあおりを受け開催権を返上し、やむを得ないとして受理された歴史があるのだ。
■中止は腰抜けか英断か
9万人もの外国人が一気に来日し、新型コロナウイルスの変異株が多々入り込み、医療崩壊が起きることを国民は恐れている。変異が変異を呼び「東京五輪株」なるウイルスが生まれる可能性もゼロではない。
そこで東京五輪を決行し、新型コロナウイルスの感染爆発で「病魔の祭典」と化したら、それこそ日本政府は世界からワクチン政策の遅れを指摘され、IOCの言いなりだと突かれ、国民の命を粗末にしたとなじられるだろう。国連やアメリカに「無理するな」と言われ、泣く泣く中止を決定するというシナリオは、決して悪いものではないはずだ。
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(文/しらべぇ編集部・浅野 ナオミ)