海外五輪選手・関係者向けプレーブックに疑問 このワクチン方針で「安全安心」とは…
東京五輪を「安全安心に開催する」と主催者たち。このプレーブックで大丈夫なのか…?
国際オリンピック委員会(IOC)は、この夏の来日を予定している海外五輪選手団や関係者のワクチン接種率について、7割の見通しであり、開催時には8割超を期待しているという。
だが、実際にどれほど「働きかけ」が行われているのだろうか。安全安心の鍵を握るといわれる「プレーブック(規定集)」を、改めて紐解いてみたところ…。
■「莫大な時間と労力を注いだ」
IOC、国際パラリンピック委員会(IPC)、東京2020オリンピック・パラリンピック組織委員会が、4月28日に公式ホームページなどで公開した、東京五輪・パラリンピックの海外参加者向けプレーブック第2版となる『Tokyo 2020 Playbooks/May 2021 version2』。
日本の新型コロナワクチン政策が遅れているせいもあり、IOCがやや恩着せがましく「完成までに莫大な時間と労力を注がなければならなかった」と強調したことも印象的だ。
■45頁もの大ボリューム
公開されたプレーブック第2版は7種類。来日する選手およびチームスタッフ向けのものは60ページにも及び、関係者向けは、放送、報道、国際スポーツ連盟、PR、スポンサー、家族などカテゴリー別に作成され、いずれも45ページ前後ある。
共通してマスク着用、手指の消毒、ソーシャルディスタンス、換気など来日中の行動に関する諸注意が延々と示され、頻繁な検査や行動範囲の制限がつきまとうことへの協力と理解を訴えるものになっている。だが、膨大な文章量は読み手をウンザリさせるに違いない。
■ワクチン接種は「奨励」
安全安心の大きな鍵を握るといわれるワクチン接種だが、それについては驚いたことに、どのプレーブックでも最終ページ付近にちょっと触れているだけだ。
「IOCとIPCは各国の五輪・パラリンピック委員会と密接に連携し、ワクチン接種の推進に努めている。可能であれば接種を奨励するが、国ごとに定められた予防接種のガイドラインもあり、義務ではない」
2回目の接種で高熱や痛みで体調を崩す人が多いといわれるだけに、これから「ワクチンを打ちたい」と申し出るのでは遅いだろう。接種率8割以上を期待するのは、じつはもう難しいのではないだろうか。
■7万8千人もの関係者
彼らの来日時の行動や健康状態については、選手とチームスタッフだけなら情報の把握や管理は比較的簡単にできるだろう。最近行われた大会の出場で、厳しいコロナ対策に慣れていることも期待できる。
問題は、現時点で7万8千人ほどと考えられている関係者たち。ワクチンパスポートを得て気持ちが大きくなっている人もいれば、問いかけようにも英語を理解しない人々も大勢いる。その前に、彼らはこの特大ボリュームのプレーブックを最後まで読むだろうか。
ただでさえ外国人に甘い、やさしいなどと言われている日本人が、彼らにどれほど厳しく干渉することができるのか、甚だ疑問だ。
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(文/しらべぇ編集部・浅野 ナオミ)