郵送物で同性愛者だと知られた男性 「恥さらし」と激怒した親族によって惨殺
普段からしぐさやファッションがどことなく女性のようだった20歳の男性。家族は郵送物を勝手に読み、そして激怒した。
このほどイランの20歳の男性が、「名誉殺人」の名の下、親族の男たちにより惨殺された。同性愛者であることをずっと隠してきたが、不在の際に届いた郵便物で、家族にそれを悟られてしまったという。
イランの性的マイノリティの人権擁護団体である『6Rang』が報じ、イギリスの『Mirror』などが続いている。
■隠していた性的指向
イラン・フーゼスターン州のアフヴァーズで4日、アリ・ファゼリ・モンファレドさんという顔立ちがとても美しい20歳の男性が、親族の男たちの手で殺された。
アリさんは、ともに暮らす家族に自分が同性愛者であることを隠していた。イランでは同性愛がイスラム法(シャリーア)で固く禁じられ、性行為が発覚すれば裁判で死刑が下ることすらある。カミングアウトは命にかかわる問題なのだ。
■兵役は困難
アリさんの性的指向を家族が悟ったきっかけは、イスラム革命防衛隊から自宅に届いた郵便物だった。兵役により軍隊に参加するよう求められたアリさんは、密かに入隊免除の申請を行っていた。
男所帯の軍隊に同性愛者が混じること、寝食をともにすることの難しさは軍も承知しているのだ。
免除になれば、アリさんは家族には入隊を装ってトルコに逃亡し、交際中のアギル・アバヤットさんと一緒に暮らす予定だった。しかし、その免除通知がやっと自宅に郵送されたときに本人は不在で、異母兄が勝手にそれを読んでしまった。
■事実を知った異母兄が…
「同性愛は精神疾患と見なされるため、あなたの入隊を免除する」という書面に驚いた腹違いの兄。アリさんのしぐさやファッションはどことなく女性的だったことに気づいていた兄は、「一族の恥さらしだ」と激怒した。
殺意を抱いた兄はいとこ男2人に声をかけ、帰宅したアリさんを村の果てに連れ出すと、3人で激しい暴行を浴びせた。動けなくなったところで首を切り落すという残虐さで、遺体はヤシの木の下に埋められた。愛する息子を失った母親はショックで倒れ、入院中だという。
■法整備なかなか進まず
国際人権団体の『ヒューマン・ライツ・ウォッチ』によると、イランを含め、同性愛を犯罪とみなす国は70ほどあるとのこと。また『国際レズビアン・ゲイ協会』によると、イランは同性同士の性行為が発覚した者を殺しても、罪に問われない11の国の1つだという。
しかし、このたびイラン警察は3人の男を第一級殺人の容疑で逮捕。異母兄とアリさんは普段から不仲だったため、法整備がなかなか進まない同性愛者に対する名誉殺人より、一般的な殺人事件として裁かれる可能性も考えられるという。
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(文/しらべぇ編集部・浅野 ナオミ)