五輪開催に期待するWHO 「日本の危機管理能力は高い」に強い違和感
日本国内では、いよいよ五輪中止を求める動きが活発になってきているというのに…。
新型コロナウイルスのパンデミックに関する発言や方針が、世界に極めて高い影響力を持つ組織である世界保健機関(WHO)。彼らが、7月の東京五輪・パラリンピック開催を期待していることがわかった。
開催国の日本では国民の8割近くが反対という実情を、きちんと理解しているのだろうか。
■「五輪開催に期待」と発言
7日に記者会見を開き、7月の東京五輪・パラリンピック開催について言及したのは、重い感染症のアウトブレークやパンデミックといった緊急事態を扱う部門の責任者であるマイク・ライアン(Mike Ryan)氏。
「日本国内での新型コロナウイルス陽性者はこのところ横這い」「この状況下では土壇場での判断を余儀なくされるだろうが、夏の五輪開催に期待している」「観客の受け入れについても、正しい判断がなされるだろう」などと述べた。
■日本の危機管理能力を高評価
「社会の混乱を回避しながら、東京五輪はここまでリスク管理や大会の準備を大変上手に行ってきた」と述べ、新型コロナウイルスに関する日本の危機管理能力を高く評価するライアン氏。
菅首相が「開催は可能だ」と発言している限り、それをサポートするというスタンスなのかもしれない。だが危機管理に関して言えば、日本に渡航後の自主隔離と短い待機期間は、外国人も「甘い」と驚いているという。
WHOも英米のメディアと同様に、五輪の開催国という割には水際対策が甘い、ワクチン政策の遅れは致命的なミスだ、などと批判してもよいはずだ。いや、批判するべき立場にある。奇妙なほど日本を称賛する様子には違和感しかない。
■五輪参加者に優先接種
日本では、まだ接種を受けていない医療従事者、高齢者や基礎疾患を持つ人々が大勢いるが、丸川珠代五輪相は「すべての五輪代表選手、監督、コーチに5月末からファイザー製のワクチンを2回分提供する」と発表した。
そもそもワクチンの配布方法については、五輪開催を念頭にするなら首都圏にまずは集中させ、出歩けない施設入所者より感染を広げる若い世代に受けてもらっては、という案もあったようだ。
だが結局は、感染した際に重症化しやすい高齢者から全国隅々まで公平に、と決定。変異株では若者も重症化しやすくなっており、さらに五輪参加者が優先となれば、今さらだが「公平にという精神は?」と批判を買うのは当然だろう。
■五輪中止のオンライン署名も
アンケートで見る限り、日本の国民の8割近くが7月の五輪開催に反対している。大会ボランティアの辞退が相次ぎ、協力を求められた医療従事者の数の多さは大きな反発を生み、Twitterでは「#看護師の五輪派遣は困ります」がトレンド入りした。
また、宇都宮健児弁護士が署名サイト『Change.org』で始めた五輪中止を求めるオンライン署名も大きな話題に。8日午前11時の時点で26万人が賛同している。寄付を依頼されるページが現れるが、署名のみでも有効性は変わらないという。
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(文/しらべぇ編集部・浅野 ナオミ)