政府有識者会議で女性宮家・女系天皇の議論は進むのか? 金子宗徳・亜細亜大学講師に聞く
菅義偉首相の呼びかけで招集された、皇位の安定継承のための有識者会議。どのような議論が展開されるのか、右派の論客に聞いた。
■専門家でない有識者に期待する理由
—有識者6人のメンツを見てどんな感想を持たれたか?
金子:有識者6人の内訳をみると、男女が3人ずつ。人口比からすれば当然の判断でしょう。
年代で見ると、経済界代表であるJR東日本会長の富田哲郎氏が69歳、次いで座長に就任した労働経済学者で慶應大学学事顧問の清家篤氏が66歳、元ニュースキャスターで国際政治学者の宮崎緑女史が63歳、と60代が3名。
残る3名は、国際政治学者で慶応大学法学部教授の細谷雄一氏が49歳、女優でエッセイストの中江有里女史が47歳、行政法学者で上智大学教授の大橋真由美女史が46歳、と全員が40代。
「課題の重さに対して、失礼ながら、いささか“軽量級”」という指摘もありますが、菅内閣はあえて「有識者らしい有識者」を外したのではないかと個人的には思います。
というのも、あまりに専門的な議論が展開された場合、その内容を国民の大半が理解できず、結果として皇室が国民から遊離した存在になりかねません。
さらに言えば、「皇室制度の専門家」として知られる人々を集めると、それぞれが自説を展開するだけで結論に至らない可能性すらあります。専門家の知見は、ヒアリングを通じて結論に反映させることが可能です。
菅内閣が有識者会議に期待しているのは、専門家同士による高度な議論の結果を国民に受け入れさせることではなく、平均的な知性さえあれば理解できる水準で展開される議論の過程を国民に見せることではないでしょうか。
■どうなる? 女性宮家・女系天皇
—有識者会議によって、女性宮家の創設や女性天皇・女系天皇の容認は実現するでしょうか。
金子:この問題に回答する前提として、皇位継承のルールを最終的に御裁可されるのは当代の天皇陛下であるべきということです。
天皇は「国政に関する権能を有しない」と日本国憲法にありますが、天皇の地位に関わることを当事者であられる今上陛下の御意向を踏まえずに決めることは社会的通念に照らして間違っています。
内閣が「安定的な皇位継承を確保するための諸課題、女性宮家の創設等」に関する意見を国会に提出する時点で、今上陛下の御内諾を得ることは必要不可欠でしょう。
この有識者会議は内閣が意見を集約する過程で開かれているもので、この会議が女性宮家や女性天皇・女系天皇の可否を決めるわけではありません。
平均的な知性さえあれば理解できる水準で議論が展開されるという私の予想が正しいなら、女性宮家や女性天皇・女系天皇に肯定的な世論調査の結果や女性の活躍を後押しする風潮に後押しされる形で、女性宮家の創設や女性天皇・女系天皇の容認という答申が出される可能性もあり得るとは思います。
だからと言って、その方向で物事が進むかは何とも言えません。と言うのも、その答申を受けて最終的な方向性を定めるのは内閣だからです。
その上、本年10月までに行われる衆議院選挙において自民党が敗北したならば菅内閣は総辞職することとなるでしょうが、そうして新たに成立する内閣が前内閣の定めた方向性に拘束される必要性はないのです。現に、小泉内閣や野田内閣が設置した有識者会議の答申を安倍内閣は踏襲していません。