9歳男児がキックボクシングで家計支える コロナ禍で「稼がないと」
9歳の息子のキックボクシングに「心配していない」という母親。将来はムエタイで活躍してほしいという。
格闘技ムエタイの発祥の地でもあるタイ。首都バンコクではコロナ禍であることも拍車をかけ、ボクシングジムに入門する幼い子供たちが急増しているという。
アジアのメディア『Channel News Asia』が報じ、『NEW YORK POST』も続いたことから話題は世界に広がり、波紋を広げている。
■目的はやはり金銭
コロナ禍で外国人や観光客の数が激減し、すっかり経済が停滞してしまったタイ。首都バンコクでは今、幼い子供たちが大勢キックボクシングに挑戦するようになっている。
目的はやはり金銭。家計の助けどころか、多くが「僕が家族みんなを食わせていく」という熱い思いを口にし、ジムの門をくぐるという。
子供キックボクシングは、タイでますます盛んになっている。注目される選手の1人が、タタ・ポル・ラスアのリングネームで知られる、9歳のポルンパッタラ “タタ” ペアチャウライくんだ。
■全国30万人がプロを目指す
自宅で体を鍛え続けてはいるものの、やはりコロナ禍でジムは休業中だ。各種スポーツイベントの開催も禁じられており、5ヶ月以上リングから遠ざかっているタタくんは、メディアのインタビューで「早くリングに上がり試合で勝ちたい。お金を稼がないと」と焦りをにじませている。
過去にある議員が、12歳未満のボクシングジム入会を禁じる法案を議会に提出したことがあったが、子供も大事な稼ぎ手だという観点から却下されていた。タイのプロボクシング協会によれば、15歳未満の会員は全国で30万人ほどおり、条件となる保護者の同意書も得られているという。
■母親の笑顔が見たい一心で
タタくんは、母親のスリーポルンさん(40)と姉(16)との3人の暮らしを、キックボクシングの稼ぎで支えてきた。「『ありがとう』と喜んでくれる母の笑顔が見たい一心で、頑張っている」と話している。
試合のない現在は行商の母親の手伝いをしているが、キックボクシングで稼げるお金は比較にならないほど高い。将来はプロのムエタイ選手になること、あるいは特別優遇枠で警察や軍隊に入隊することを期待しているという。
■死亡事故も「気にしない」
じつは2018年、タタくんと同じトーナメントに出場した13歳の少年が、ノックアウト後に脳出血で死亡していた。
それもあり、マヒドン大学・国立児童家族開発研究所の所長をはじめ多くの医療専門家が、「体の発育や脳神経学上に問題や障害が起きる可能性がある」として、子供のボクシングをやめるよう警告している。
だが、タタくんの母親は「あの死亡事故はレフェリーの判断が遅すぎただけ。ボクシングは危険から身を守るためのもので、私はあまり心配していません」と話す。息子が将来ムエタイの選手となり、成功を収めることをひたすら期待しているそうだ。
・合わせて読みたい→ちとせよしの、お肉1キロ食べてジムに直行? アスリートのような食生活に反響続々
(文/しらべぇ編集部・浅野 ナオミ)