スエズ運河の座礁トラブル 再びトイレットペーパー危機の恐れも?
世界の貿易の約12%がスエズ運河の水路を利用してきた。この度のトラブルがいかに深刻なものか疑う余地もない。
世界物流の大動脈であるエジプトのスエズ運河を、完全に塞いでしまっている超巨大コンテナ船。4日が経過した時点で、末端価格にして100億ドル近くという商品を積んだ200隻以上の船舶が通過できないとも伝えられている。
そんな中、世界が再びあのパニックに見舞われる可能性が出てきたことを、『Investor’s Business Daily』『Mirror』他が続々と報じた。
■「猛烈な砂嵐」との情報も
船長400メートル、重さ22万トンというパナマ船籍の世界最大級のコンテナ船「エヴァーギヴン(Ever Given)」号。日本の今治造船の子会社である正栄汽船(愛媛県今治市)が所有し、台湾の長栄海運が運航にあたっている。
中国からオランダのロッテルダムに向かう中、エヴァー・ギヴン号は現地時間の23日の朝、マディヤー(Ma’diyah)付近の狭い部分で座礁した。停電により横流れが発生したという情報に加え、猛烈な砂嵐が吹いていたとの情報もあるようだ。
■再びトイレットペーパー危機も
タグボートによる船首の移動が試みられたが26日には断念。米国の海軍が要請を受けて現地に向かい、特殊な技術を提供するだろうとの最新情報があったが、正栄汽船も26日に記者会見を開き、船体周辺の土砂を撤去する作業を進め、離礁を目指していることを明らかにした。
超巨大コンテナ船の座礁と水路の閉塞で、石油価格高騰への連動を避けられないとの見方も多いが、それに加えて注目が集まっているのが、再びのトイレットペーパー危機報道だ。
■中南米最大の紙パルプ会社
現在、どの船舶もアフリカ大陸を沿う航路での迂回を余儀なくされ、ソマリア沖やギニア湾では海賊対策として軍による援護が行われている。
その影響を受ける業界は多岐にわたり、人々の生活に直結する食糧、生活物資、ガソリン、液化天然ガスなどの価格の変動や流通の状況に、今後必ずや変化が起きるとみられている。
そんな中、ブラジル・バイーア州のサルバドールを拠点とする中南米最大規模の紙パルプ会社『スザノ・パペル・エ・セルロース(Suzano Papel e Celulose S. A.)』のCEOが、米国『ブルームバーグ』とのインタビューに応じた。
■パルプの出荷量に影響
スザノ・パペル・エ・セルロース社は80ヶ国を超える世界の製紙メーカーに、トイレットペーパーの製造に必要な広葉樹パルプを供給。世界におけるシェアの約3分の1を誇っているなか、スエズ運河のトラブルで影響を受けてしまった。
「今月から出荷量が減る」と説明する同社のCEO。これにより、市場にまた新たなトイレットペーパー危機説が浮上してしまった。中国では複数のメディアが、上海にある多くの製紙メーカーが打撃を受けると報じている。日本も決して無縁ではないはずだ。
・合わせて読みたい→トイレットペーパーがズボンに挟まっていた経験 30代女性は3割も
(文/しらべぇ編集部・浅野 ナオミ)