新型コロナで守られるべき喘息患者 優先接種を断られる海外事例も
軽度の喘息患者のなかには、新型コロナ感染で「最悪なインフルエンザと喘息の発作が一気に襲ってきた感じで、意識が飛んだ。集中治療室で過ごした記憶も半分しかない」と話す人も。
厚生労働省が5日、新型コロナウイルスワクチンの先行接種を受けた30代の医療従事者の女性が、アナフィラキシーショックを起こし、その場で適切な治療を受けたことを公表した。「持病だった喘息の関係は?」「接種して大丈夫なのか」と心配する声が多く上がっているが…。
■喘息患者とワクチン接種
慢性の呼吸器疾患のひとつである喘息。その患者は新型コロナウイルスへの感染を非常に恐れていると言われるが、「自分の喘息はワクチン接種が優先されるのか否か、よく理解できていない」という人が意外に多い。
自身、あるいは身内に喘息患者がいるという人にとって、このたびの30代女性のアナフィラキシーショック報道には大きな不安が募ったが、その発生確率の低さと新型コロナの予防効果の高さを考えれば、「やはり打ちたい」「打つよう薦めている」といった声が徐々に増えているとも言われている。
■1年以内の入院経験の有無
そんな中、イギリスでは今月3日の時点で2千万人強が初回の接種を終え、96万人が2回目を完了。だが、喘息患者が優先接種を受けていない地域があると『BBC』『The Independent』などが報じている。
問診で「過去に重い喘息で3回入院を経験した。ここ1年は薬や吸入器でコントロールしている」と答えたエセックス州の40代女性が優先接種を断られ、全英・喘息患者の会にも同様の苦情や相談が無数飛び込んでいるというのだ。
政府は「ステロイド薬の経口投与を3ヶ月間以上受けた人」と示したにもかかわらず、2月中旬、国民保健サービスのNHSイングランドが各GP(かかりつけ医)宛てに「過去1年間に入院を経験した喘息患者を最優先で」との通達を出し、通院患者は優先しないとの誤解を招いた可能性があるという。
■日本での解釈は?
2月15日に『新型コロナワクチン優先接種についての検討案』を示した厚生労働省。そこでは、接種順位の上位となる基礎疾患のなかに「慢性の呼吸器の病気で通院/入院」を挙げている。気管支喘息は慢性の呼吸器疾患のひとつだ。
だが一般社団法人・日本喘息学会は2月10日、『喘息患者の新型コロナワクチン接種についての注意事項』のなかで、「喘息は優先接種対象疾患ではないが、コントロール不良や重症の喘息の場合は、接種のメリットが極めて高いと思われる」と示していた。
両者においては解釈に微妙な違いがありそうだ。
■軽度の喘息も油断は禁物
軽度の喘息は深刻なリスク要因ではないとの見方があるようだが、そんな1人である米国・インディアナ州在住の20代男性は、新型コロナに感染して突然職場で倒れ、救急搬送された病院の集中治療室で半月以上を過ごしている。
「みるみる息が苦しくなり、その後のことは意識や記憶が半分しかない。最悪なインフルエンザと喘息の発作が一気に襲ってきた感じだった」と話しており、やはり油断は禁物なのだ。
■ふるいにかけられる可能性
日本でも、基礎疾患を有する65歳未満の人たちへの優先接種がいずれ始まるだろう。現場が手一杯になってきたとき、イギリスのようにふるいにかけられて「少し待つように」と告げられる可能性があるのは、やはり喘息患者なのかもしれない。
ただし、慢性呼吸器疾患を抱える多くの人が新型コロナへの感染を警戒し、ここ1年は可能な限り入院を避けてきた。この状況下で「入院したか否か」で判断されるのではあまりにも辛い。今のうちに主治医に相談し、接種に関する正しい判断と助言を得ておく必要がありそうだ。
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(文/しらべぇ編集部・浅野 ナオミ)