「人類の次なる脅威はニパウイルス」と感染症対策国際組織 自然宿主はまたコウモリ
新型コロナウイルスが収束したら、やっと安心して人と集まり、会食し、旅行ができるようになる。願うのはただひとつ、そんな日々ができるだけ長く続くことだ。
「アフター・コロナ」と呼べる日が1日も早く来るよう、期待してやまない私たち。その一方、別のウイルスによる新たなパンデミックがそう遠くなく始まることも、覚悟していなければならないという。ある不気味な情報を英国のメディア『The Sun』『Mirror』などが報じた。
■人類の次なる脅威は…
「感染症流行対策イノベーション連合(Coalition for Epidemic Preparedness Innovations 略称:CEPI)」のワクチン研究開発部長を務めるメラニー・サヴィル博士は、人類の新たな脅威となるウイルスとして、「ニパウイルス」の名を挙げた。
CEPIは今後に流行する可能性がある感染症を見極め、官民連携のパートナーシップを組んでワクチンの開発にあたり、広く普及させるという使命のもと2017年に発足。モデルナ社の新型コロナウイルス・ワクチンの開発にも関わっている。
■自然宿主はやはりコウモリ
「ニパウイルス感染症が次なる脅威」と論じるサヴィル博士によると、同ウイルスは1999年、マレーシアのある養豚場でヒトの感染が確認され、南アジアと東南アジアで患者が散発しているという。
自然宿主となってニパウイルス伝播を媒介すると考えられているのは、大型で食用でもある「フルーツコウモリ」だ。感染しているコウモリと接触する、食べる、あるいはコウモリが触れたマンゴーなどの果物を食べて感染することがわかっている。
■長い潜伏期間と高い致死率
ニパウイルス感染症の症状は、重度の脳浮腫、けいれん発作や嘔吐など。潜伏期間は最大45日間で、発症前の1ヶ月間で大勢の人にうつす可能性があるうえ、致死率は45~75%と非常に高い。
ウイルスの株は変異を起こしやすいとみられ、一旦流行すると瞬く間に東南アジア一帯に広がることが懸念される。そのため世界保健機関(WHO)は、ニパウイルスを優先的な研究を要する病原体16の1つと定めている。
また、深刻な流行が将来的に懸念される未知の病原体をWHOは『Disease X(疾病X)』と呼んで、ウイルスの遺伝子配列の速やかな解析を呼び掛けているが、深刻度の低いものも合わせると、未知のウイルスの数は167万にも及ぶそうだ。
■パンデミックは今後5年周期で
気候の変動や環境破壊で生息地を奪われた動物たちは、人間との距離をせばめ、人々は世界中を簡単に移動している。そうした現状に、サヴィル博士は「注視すべきはニパウイルスだけではない。新型コロナのようなパンデミックは今後も5年ほどの周期で出現するでしょう」と話す。
なおCEPIでは現在、全コロナウイルスを標的とするプロトタイプ・ワクチン開発のため、ウイルス株ライブラリーに系統保存する作業が進められている。新型コロナウイルスのパンデミックから学んだことが、今後にしっかりと生かされるであろうという。
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(文/しらべぇ編集部・浅野 ナオミ)