「貧困家庭でも進学を」と願う受刑者たち 作業報酬を奨学金に寄付し3年で数百万円に
きっかけは地元の高校生との語らいだった。最初は表情が硬い生徒たちも、笑顔で迎えてくれる受刑者とすぐに打ち解け、心を通わせるようになるという。
懲役刑が下った受刑者たちは、各種の労務作業と引き換えに報酬を受け取っている。刑期にもよるが、罰金の支払いや損害賠償の支払いに充てた後は、家族への仕送りや貯蓄に回されることが多いという。ところが米国のある刑務所では、そのお金を世の中の役に立ててもらおうとする募金活動が行われている。興味深い話題を、米国のメディア『CBS News』『Inside Edition』などが報じた。
■凶悪犯ぞろいの刑務所
米国・カリフォルニア州モントレー郡のソレダード市にある州立の刑務所。そこには凶悪な事件を起こして有罪判決を受け、重い量刑とともに送り込まれた受刑者が大勢いる。
ジェイソン・ブライアント服役囚もそのひとりで、20歳だった1999年に強盗致死事件を起こし、懲役26年の実刑判決が下っていた。だが彼は3年前、あることがきっかけで社会貢献に目覚めたという。
■きっかけは「朗読の会」
その刑務所には「読書クラブ」があり、7年ほど前からは、同郡サリナス市にあるパルマ・スクールの中等部・高等部の生徒たちを迎えての朗読の会が行われてきた。
3年前そこに参加したブライアント服役囚は、良書を読み聞かせしてくれる生徒たちの清らかな心に感銘を受け、恩返ししたいと考えるように。「大学の進学費用は高額。少しでもサポートできれば」と、奨学金を募る活動を始めたのだった。
■社会貢献したい受刑者たち
州立刑務所における刑務作業への報酬は、1時間あたりわずか8円から100円ちょっとと非常に低いが、社会に貢献したいと募金活動に賛同した受刑者は800名にも。彼らは清掃や家具づくりなどで得た報酬から、思い思いの額を募金した。
こうして、パルマ・スクールの高等部から大学進学を目指す子供がいる低所得の家庭に対し、3年間で計330万円ほどの奨学金が授与された。
その後、ブライアント服役囚は州知事による恩赦で釈放され、元受刑者の再犯防止を目的に各種のプログラムを提供するNPO法人の責任者に就任している。
■学歴で判断する人は2割
しらべぇ編集部が全国20〜60代の男女2,168名に調査を実施したところ、「人を学歴で判断する」と回答したのは全体の19.7%だった。
「学力や学歴のコンプレックスがひどく、社会からの落ちこぼれ。それを誰より強く自覚していた」と語る受刑者たち。そういう若者が1人でも減るように、と願う彼らから奨学金を受け取った生徒たちは、メディアの取材に「身の引き締まる思いです」と話している。
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(文/しらべぇ編集部・浅野 ナオミ)
対象:全国10代~60代の男女2,168名(有効回答数)