29歳女性が「27歳の赤ちゃん」を出産? 進歩し続ける受精卵凍結保存の技術
「凍結胚の里親に」という呼びかけは、世界でも極めて珍しく、そして新しい幸せのかたちを運ぶコウノトリだった。
生後まだ1ヶ月ちょっとの本当に小さな赤ちゃん。その子は本来なら、ママと2歳しか違わない27歳だという。そんな不思議な出産が叶ったのは、受精卵凍結保存の技術のおかげだった。驚きの話題を『NEW YORK POST』や『Fox News』が伝えている。
■親子4人で迎えるクリスマス
米国・テネシー州のノックスビルに暮らすベンジャミン・ギブソンさん(36)と妻のティナさん(29)。2017年11月、26歳だったティナさんは長女エマ=レンちゃんを出産し、今年の10月には次女のモリー=エヴァレットちゃんが誕生した。
親子4人で迎えるクリスマスを一家はとても楽しみにしているという。
■珍しいコウノトリ
以前に、嚢胞性線維症を発症していた夫のベンジャミンさん。不妊は避けられなくなり、夫妻は養子を迎えることを検討したが、そんな中で凍結胚の里親を募集しているとの情報を知った。
自分たちと小柄な外見がそっくりなカップルが凍結胚を提供していることを知り、ギブソンさん夫妻は「里親になる」と決断。厳しい管理の下で融解された凍結胚(凍結受精卵)がティナさんの子宮に移植され、やがてエマちゃんとモリーちゃんのふたりが生まれた。姉妹は共に健康だという。
■融解から出産まで全て順調
驚くのは、その胚(受精卵)が1992年10月に凍結されていたこと。本来は20代後半であるべき人間を29歳のティナさんが産み、育てているのだ。
凍結保存技術が大きく進歩し、長い年月が経過しても、胚の融解、ティナさんの子宮への移植と着床、妊娠の維持は順調だった。このことはギブソンさん夫妻を、そして医師らを心からほっとさせたという。
■「安易に捨てないで」
親子の間に血縁関係はないが、子供たちが生物学上のれっきとした姉妹であることが嬉しいというギブソンさん夫妻。世界でもまだ極めて珍しい試みだが、「この新しい幸せのかたちは、不妊に悩むカップルに多くの希望を与えるでしょう」と話している。
なお、ふたりの2度の出産を叶えた国立胚提供センター(National Embryo Donation Center)は『NEW YORK POST』の取材に、「年月の経過で凍結胚を捨てる必要はもうない。マイナス396度の液体窒素貯蔵タンク内に置かれている限り、ずっと良好な状態を維持できる」と力強く語っている。
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(文/しらべぇ編集部・浅野 ナオミ)