事故死した遺体の臓器を闇の斡旋業者へ ボロ儲けの医師ら6人に実刑判決
悲惨な交通事故の遺体なら、腹部の特殊な傷に誰も気づかないとでも思ったのだろうか…。
交通事故に見舞われ瀕死となっている患者に対し、その悪徳医師らの心にあったのは、「この命を救ってあげたい」という気持ちではなかったという。何ともやるせない事件の話題を中国の『澎湃新聞』が伝え、イギリスの『BBC』や『Mirror』を通じて世界に波紋を広げている。
■ニセの救急車で現場に急行
中国・安徽省蚌埠(ほうふ)市の懐遠県人民法院で、医師を含む医療従事者ばかり6名の被告に実刑判決が下され、全員の身柄が刑務所へと送られた。
彼らが悪事を働いたのは、2017年から2018年にかけてだ。深刻な交通事故で助かる見込みのない患者の元に、手術器具を積んだニセの救急車で急行。
死亡を確認すると車内で遺体から肝臓と腎臓を摘出し、闇の臓器移植斡旋業者に届けて大金を受け取っていたという。これらの犯行で、医療上の不法行為、死体損傷、搾取ほかの罪に問われていた。
■不審に思った遺族
ある男性が当局に相談したことがきっかけで、最初に1つの事件が明らかになった。男性はある時、母親の遺体から肝臓と腎臓が摘出され、臓器提供を待っていた患者に移植されたという事実を知った。母親にはそのような意思がないことも知っていたため、不審に思ったという。
そこで、臓器提供の手続きを管理する公的機関で登録簿を閲覧させてもらったところ、母親の名前は見つからなかったため、「闇の取引ではないかと疑惑が募った」と話している。
■意思表示の文書も偽造
母親の意思を無視した臓器提供について、男性は親族にも確認。すると口封じが目的か、医師は彼のいとこに日本円で300万円を超えるマージンを送りつけてきたことがわかった。
医師らは極めて狡猾だった。罪を問われた際に正当化できるよう、公的機関が発行する臓器提供意思表示の文書を偽造し、事故現場で親族に署名するよう強く求めていたという。
■腕の良いエリート医師ばかり
一連の事件での犠牲者は、少なくとも11名。また懲役2年4ヶ月から10ヶ月が下った被告のうち、医師は4名。
安徽省の淮北鉱工総医院、懐遠県人民医院、東隣となる江蘇省の南京大学医学院附属鼓楼医院、江蘇省人民病院の主任医師やICUの責任者などで、臓器移植医療部に勤務した経験を持つ者もいた。
有名な大病院の優秀な外科医らが複数で関わっていたこの事件に、中国の人々の間で医療不信は募る一方だという。
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(文/しらべぇ編集部・浅野 ナオミ)