日本学術会議、任命拒否された4人の学者が会見 「違憲・違法」と批判
日本学術会議への任命が菅義偉首相によって拒否された4人の教授たちが日本外国特派員協会で会見を行った。
日本学術会議が推薦した候補のうち6人を菅義偉首相が任命しなかった問題で、候補だった早稲田大学の岡田正則教授、立命館大学の松宮孝明教授、京都大学大学院の芦名定道教授、慈恵会医大の小澤隆一教授ら4人が、23日、日本外国特派員協会で記者会見を開いた。
芦名氏と小澤氏はリモート参加し、他に任命されなかった東京大学の宇野重規教授・加藤陽子教授は文章で声明を寄せた。
■戦前の苦い教訓を踏まえ
小澤氏は戦前の憲法には学問の自由の規定がなく、教授の人事などについてだけ一定の自治が慣行として認められていたことを例示。しかし軍国主義化の動きの中で、慣行上認められてきた大学の自治も掘り崩され、治安維持法事件や天皇機関説事件など思想弾圧も相次いだ。
「その中で科学も政治に従属して戦争遂行に動員され、日本はアジア・太平洋戦争へと突入し、敗戦を迎えることになります」と述べた。
戦後制定された日本国憲法は、こうした戦前の苦い教訓を踏まえ、思想・良心の自由、信教の自由、表現の自由に加えて23条で明治憲法にはなかった学問の自由を明確に保障することになったと解説。
日本学術会議については、「この学問の自由の保障を受けて、わが国の平和的復興、人類社会の福祉に貢献し、世界の学会と提携して学術の進歩に寄与することを使命として設立された」とその意義を強調した。
■岡田教授「3つの点から違憲・違法」
行政法が専門の岡田氏は3つの理由から、今回の任命拒否が違憲・違法と述べた。一つ目は、任命拒否は学術会議の独立性を否定するものだという点。
「学術に対して政治権力が距離を保つべきことを学術会議の組織的な独立性として学術会議法は定めています。会員の適否を政治権力が決められるということになれば、学術会議の独立性は破壊されてしまいます」と学問の自由の制度的枠組みを破壊することになるため、憲法23条違反だと述べた。
第2の理由は、学術会議法7条と17条に違反している点。国民が学術会議法を通じて会員の選定罷免権を委ねているのは学術会議という組織体であって、総理大臣ではないと指摘した。
第3の理由は、今回の任命拒否は手続き上も違法だという点。岡田氏は「菅総理大臣は今回の任命決定に当たって、学術会議から提出された名簿を見ていないと明言しました。今回の任命拒否は学術会議からの推薦リストに基づかない判断であったということになります」と述べ、これは学術会議法7条2項の規定に明らかに違反する行為だと指弾した。