完全菜食主義の両親が育てた赤ちゃんに脳障害 栄養失調のうえ健診も受けさせず
極端な食生活の偏りに対し、判事は「精神面でのカウンセリングが必要だ」と述べた。
「ヴィーガン」とも呼ばれる完全菜食主義者の人たち。彼らは肉や魚ばかりか、卵や乳製品の摂取も拒む。しかし、成長期にある我が子に同じ食の価値観を押し付ければ、深刻な問題が起きてくることを忘れてはならないようだ。
■体重わずか6.6キロ
2018年8月、オーストラリア・メルボルンにあるロイヤル・チルドレンズ病院の集中治療室に、ぐったりとしている生後12ヶ月の女の赤ちゃんが運ばれてきた。
体重はわずか6.6キログラム。同じ月齢の女の子の平均体重より4キロも少なかったうえ、全身の皮膚の色がひどくくすみ、あざ、発疹、潰瘍もできていた。さらに小脳のダメージによる協調運動障害、筋力低下、そして体の震えなどが見られたという。
■野菜・果物で育児
赤ちゃんの30代前半の両親は、我が子の健康を真剣に心配している様子だった。
医師が普段の食生活について質問すると、両親は「自分たちは完全菜食主義者。子供には育児用ミルクを与えず、ココナッツウォーターに野菜や果物を混ぜたスープで育ててきた」と説明。偏った食習慣を我が子にも強要していたのだった。
また、両親は保健師や看護師から育児に関して注意されることを嫌がり、医療機関ではなく、代替医療を提唱するウェブサイトを頼りにしていた。娘の体調不良についても、たびたびそのオンライン相談を利用していたという。
■脳と神経に一生のダメージ
赤ちゃんの脳・神経にもたらされたダメージは、タンパク質摂取の不足が原因だとして医師は警察に通報。両親は育児放棄・怠慢および虐待の容疑で逮捕・起訴され、1ヶ月ほどして回復した赤ちゃんは当局に保護された。
容疑を認めた両親は2018年11月にヴィクトリア郡裁判所で有罪答弁を行ったが、下の子供が誕生すると破局した。そこで母親は「医師や看護師の指導を守る」という条件の下、娘の面倒を見ることが許可されたという。
■「これからが闘い」と判事
3歳の誕生日を迎えた娘を献身的に介護し、2番目の子供の健康も考えて食生活の改善がみられるようになった母親と、完全菜食主義の食生活を改めると誓った父親。
このたびの裁判で、判事はそんな両被告に実刑判決を下すことを避け、12ヶ月にわたる地域社会での矯正・更生の活動、および精神カウンセリングを受けるよう命じた。
我が子の身体に障害を与えてしまったことを悔い改めながら生きていく両親について、判事は「苦難に満ちた人生になると覚悟を」と述べている。
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(文/しらべぇ編集部・浅野 ナオミ)