ウマから得られる最強の新型コロナ中和抗体 コスタリカで今月中旬から治験開始
新型コロナウイルスに関する治療方法は、まだ確立されていない。そんな中で注目を集めているのが、ウマが作る強力な抗体だという。
世界の88万人が命を落としている新型コロナウイルスを何としても消滅させたいとして、世界中の研究者が知恵と技術を競い合っている。そんな中で今、「血清療法」に大きな注目が集まっていることをご存じだろうか。
■ヒトの数十倍も強力な抗体
先月13日、全米医学アカデミー (NAM)が開催した新型コロナウイルス関連のシンポジウムにおいて、ブラジルの学者から興味深い発表があった。
「新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)にも血清療法が有効。ウイルスの表面を覆うスパイク・タンパク質と反応し、免疫機能が働く様子をウマで観察した結果、ヒトの20~50倍という強力な中和抗体が作られることがわかった」というもの。
臨床試験についてはブラジル国家衛生監督庁(ANVISA)の承認を待っているとのことだった。
■狂犬病や破傷風も
毒素を無毒化する抗体が投与されれば病気が治り、予防にもなるという考えに基づく血清療法(抗体療法)。
これは数十年の歴史を持つ安価な療法で、人間が種痘、狂犬病、ジフテリア、破傷風などを恐れずに暮らせるようになったのも、回復した患者の血液から取り出された抗体(免疫グロブリン)が医薬品として生まれ変わったおかげだ。
なお血清製剤はウイルスではないため、接種しても「感染」にはならない。
■エボラ出血熱でも注目
「研究は非公式で、論文を発表する段階ではない」と述べていたブラジルの研究者。しかし、じつは3年前、エボラ出血熱についてもウマが作る中和抗体を利用した血清療法が注目を集めていたため、それに準ずるものとの見方も多いようだ。
エボラウイルスに感染したウマの体内で免疫機能が働き、やがて抗体が作られる。その血液を採取して精製し、分離酵素を用いることで有効成分のみを取り出すという方法だった。
■コスタリカがいよいよ治験へ
ウマから最強の中和抗体を得ようという研究は、ブラジルばかりかアルゼンチンでも進められており、ベルギーではラマまで利用していることもわかってきた。
そんな中、いよいよコスタリカ・サンホセ州にあるコスタリカ大学の研究施設のひとつ、インスティチュート・クロドミロ・ピカド(ICP)が今月中旬から26名の患者で治験を行うことを発表した。
■数週間で十分な抗体
中国と英国から取り寄せた新型コロナのウイルス蛋白質を6頭のウマに投与し、観察を続けたというICP。数週間後、彼らの血液から十分な抗体を取り出すことに成功したといい、ウマも計110頭を確保しているという。
ICPはヘビの毒と免疫グロブリンの研究で世界的な実績を持つ機関で、コスタリカ政府からは、早くも「第2相試験(フェーズ2)でも良好な結果が得られるのではないか」「医療現場で一日も早く効力を発揮してほしい」といった声が上がっている。
・合わせて読みたい→モデル・仁香、新型コロナ抗体検査を受けたと報告 その“費用”は…
(文/しらべぇ編集部・浅野 ナオミ)