自閉症の息子がマスク着用を嫌がり… 家族ともども旅客機から強制降機に
誰もが安心感とともに利用していた公共交通機関。新型コロナウイルスの出現で、それが大きく変わりつつある。
世界的に見ても、乗客乗員のマスク着用を義務とする航空会社が増えている。だが、なかには体質的な理由からマスクを頑なに嫌がる子供も。これが例外として許されるべきなのか、空の旅が主流のアメリカで今、新たな問題が浮上している。
■滑走路までわずかなのに…
そのトラブルは今月10日、米国・テキサス州のミッドランド国際空港で起きた。
乗客全員を乗せ、滑走路に向かう誘導路を進んでいたヒューストン行きのサウスウエスト航空の旅客機。ところがアリッサ・サドラーさんと3歳、1歳の子供たちの計3名が、離陸間近というそのタイミングで降機を命じられた。
「自閉スペクトラム症」と診断されていた3歳の男児が、その特徴でもある感覚上の問題を理解してもらえなかったためだ。
■マスク着用を拒み叫ぶ男児
7月27日以降、2歳以上の乗客乗員すべてのマスク着用を義務づけ、搭乗の条件として厳格に示していたサウスウエスト航空。
しかし男児はマスク着用を頑なに拒み、無理強いされると大声で「ノー、ノー」と叫んだ。客室乗務員はその状況での離陸は困難と判断。航空運賃の全額払い戻しを約束し、親子に降機を促したという。
貨物室に預入された荷物の抜き出しなど、その段階での降機は大変な手間と時間を要し、離陸にも遅延が発生する。
■感覚処理障害の問題
ヒューストンの放送局・KPRC-TVの取材に、「ミッドランドに単身赴任中の夫と夏休みを過ごした、その帰路でした。以前なら問題なく行き来できたのですが…」と話し、肩を落とすアリッサさん。
息子の機内での様子については、「あれは感覚処理障害といい、自閉スペクトラム症に認められる感覚過敏の症状です。息子は顔に何か触れることを極端に嫌います。機内に特別な席を設けるなどして例外を認めていただきたい」と訴えた。
■例外のない厳密なルール
しかし、この件に関して12日にメディアの取材に応じたサウスウェスト航空CEOのゲリー・C・ケリー 氏は、「マスク着用の義務に例外は認めない」と改めて強調した。
自身も孫をかわいがる祖父であり、小さな子供がマスクを嫌う気持ちは十分に理解しているというケリー 氏。それでも乗客乗員のため機内を安全な環境に保つことが、今は何より大切だと説明する。
サウスウエスト航空に限ったことではなく、米国ではデルタ、アメリカン、ユナイテッド航空なども「マスク着用は例外なき厳密なルールだ」としている。とはいえ、感覚処理障害を持つ乗客への配慮について一度は議論を交わす必要がありそうだ。
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(文/しらべぇ編集部・浅野 ナオミ)