消毒液ビジネスで40億円稼ぐ夫婦 正義が生んだアイデアに転売ヤー完敗
良質なものを良心的な価格で。これこそ商売の本来あるべき精神だ。
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染拡大の報道がされた直後、お店の棚から姿を消していたマスク、除菌ウェットティッシュや消毒液(ジェル)。人々が途方に暮れたなか、暗躍したのが転売ヤーだった。その汚い商法に怒りを覚えた人は多いはずだが…。
■突然訪れた商機
スコットランドのエディンバラに暮らし、15年にわたり不動産開発業者として生計を立てていたアンドリューさんとレイチェルさんのモンタグ夫妻。
ふたりは今年3月に着手した「消毒液」の製造販売ビジネスで驚きの収益を上げ、契約先やそこと交わす金額のすごさで高い関心を集めている。とはいえ、俗にいう「転売ヤー」ではない。むしろ転売ヤーに向こうを張ったビジネスで成功を収めていた。
■転売ヤーへの苛立ち
「どうしても手に入れたい」という人々の足元を見て、消毒液(ジェル)を驚きの高値でインターネット販売するようになった転売ヤーたち。エタノール濃度が低いなど、粗悪な商品も紛れ込ませていると言われていた。
500ミリリットル入り消毒液のボトルが4,000円で売られていることを知った時、モンタグ夫妻は「むしろ今こそ高濃度の消毒液を低価格で」と考え、迷わず『クリアウォーター・ハイジーン』という会社を立ち上げた。
■高品質・低価格に信頼感
スコットランドのジン蒸留所『ディーサイド・ディスティラリー』の経営者が、モンタグ夫妻と手を組んで消毒用エタノールの製造をスタート。並行して夫妻は保健医療機関、介護施設への販売ルートを築き、市民向けにオンライン販売システムも整備した。
すると国産の信頼感、エタノール80%という質の高さと良心的な価格で評判が広まり、郵便局や大手スーパーマーケット・チェーンまでが彼らの顧客に。わずか12週間前に始めたビジネスだというのに、契約総額は日本円で約40億円にも達し、スタッフも20名に増員した。
■「勝ち組」となった夫妻
これまでの収益は4億円を超えており、夫妻はイギリスの国営医療サービス事業「NHS」が主催するチャリティーにも、製品を大量に寄付するようになっている。
また、週あたり90万リットル以上の消毒用エタノールの製造が可能になり、ディーサイド・ディスティラリー社もホクホクだという。
消毒液(ジェル)、除菌ウェットティッシュ、トイレットペーパーなどの在庫を大量に抱えた転売ヤーたちが、今となっては世間に相手にされなくなった中で、まさに「勝ち組」のモンタグ夫妻。善良な商売で信頼を得る者は強い、そのひと言に尽きるのではないだろうか。
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(文/しらべぇ編集部・浅野 ナオミ)