216店閉店し元運営会社は倒産 「ステーキけん」23区唯一の現存店で見つけたもの
最盛期には全国238店舗を展開し、高い人気を誇っていたステーキチェーン店の「ステーキけん」。その残存店がまだ都内にある。
最盛期には全国238店舗を展開し、高い人気を誇っていたステーキチェーン店の「ステーキけん」。
しかし2010年代前半を境に人気は凋落し、現在営業しているのは22店舗だけだ。3月には元運営会社が破産するなど波乱続きだが、一時代を築いたのは確か。東京23区内で唯一の現存店舗となっている蒲田店(大田区)で、その味を確かめてみた。
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■当時は引っ張りだこ
潰れたファミレスや焼肉屋などをそのまま居抜きで借り、人気のステーキ屋に転身させていく手法から“ロードサイドのハイエナ”との異名を持った創業者・井戸実氏。
自著出版やTV出演などで一躍時の人となり、1,000円台から注文できる手頃なステーキメニューと、セットでサラダ、ライス、スープ、カレーなどが食べ放題になるという画期的な品書きで、若者やファミリー層を一気に取り込んだ。
記者も同店の味を求めて、わざわざ友人たちと都内から埼玉まで車を走らせたことがあるほど、魅力に溢れるお店だった。
■元運営会社は3月に倒産
しかしその後「いきなりステーキ」の台頭など新興勢力の参入や、社長のビッグマウスぶりがネットで何度も炎上するなど逆風が吹き荒れ、売上が激減。
2010年台前半をピークに店舗数も減少していき、2019年7月には井戸氏が社長を務めていたエムグラントフードサービス(「MFS」に社名変更した直後の2020年3月に倒産)から「平禄寿司」などを運営しているジー・テイスト社に事業譲渡されるという憂き目に遭った。
■蒲田店は残念な客入り
思い出補正もあるかもしれないが、あのステーキや、サラダバーは決して不味くなく、ステーキという食べ物を身近な存在にしてくれたことに間違いなかった。
その味を確かめようと6月20日(土)、蒲田店を訪れると、まだ14時台にもかかわらず広い店内には記者の他に男性客が2組だけ。カップルや子供連れがわんさかいたあの頃とは全く別の世界線に来たかのような静けさである。
店内中央には、名物であるサラダ、デザート、ライス、スープ、カレーなどのビュッフェスペースがあった。しかし、しなしなになった野菜などは一切なくしっかりしていただけに、店内の活気のなさが非常に切ない気持ちになった。
■お世辞抜きで美味しかった…
とりあえず肉を頼もう。看板メニューである「元祖けんステーキ」は150グラム1,480円。300グラムでも2,080円と手頃だ。
「いきなりステーキ」の看板である「ワイルドステーキ」と同様、牛の肩ロースを使用しており、適度な脂身と食べ応えが特徴。
しかも新型コロナウイルス蔓延が一気に広まっていた頃の3月19日、肉質のグレードを上げてさらなる美味しさを実現したそうで、確かに適度な脂身が非常に滋味深い旨味を生んでいる。
ソースは「オリジナルソース」「オニオンソース」など複数あるが、ここではシンプルな「わさび醤油」をチョイス。これが溢れ出た肉汁と絡み、よくマッチするのだ。
お代わりライスが止まらない勢いで、ここ1年で行ったステーキチェーンの中でも、お世辞抜きで一番美味しいと感じた。
■サラダバーも強い
サラダはオニオン、レタスなどの野菜から豆腐、春雨サラダまで全16種。ドレッシングも複数あり、女性客にも喜ばれそうなバリエーションだ。さらにフランスパンとガーリックバター、カレーとスープ、デザートではフルーツとゼリーなども取り放題になっており、コスパは最高にいい。
新型コロナの影響で、ビュッフェスタイルは敬遠されそうだが、定期的にスタッフが見回っている上、除菌用アルコールも随所に設置されているなど、しっかりその体制は組まれているように見える。
■再起のチャンスは…?
味もシステムも、人気絶頂だった当時のままで、むしろ今のほうが味はいいかもしれない。郊外のロードサイドではなく、近かったらまた通いたいと思う味だった。
ただ、日進月歩で進化する外食チェーンの中においては、店内の雰囲気やメニューのデザインが古臭いままと感じたことも確か。最大手「いきなりステーキ」が元気を失っている今こそ再起の時とも思ってしまうが…。
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(取材・文/しらべぇ編集部・キモカメコ 佐藤)