話題の「種苗法改正案」生産農家はどう考えているのか? 実際に聞いてみた
見送りになった種苗法改正案、農家はどう考えている?
人気芸能人もTwitterでコメントするなど、当事者以外のあいだでも大きな話題となっている「種苗法改正案」。農林水産省のページにある法案参考資料を見ると、日本で登録された農産物の海外流出を防ぐことが第一の目的とされている。
しかし、それに伴っていままでは許されてきた登録品種の自家増殖にも育成者権者の許諾が必要となり、生産農家個人の判断ではできなくなってしまうといった、生産者のコストや手間が増えるといった問題も出てくる。
■否定的な意見が目立ちがちだが…
それにより農産物の価格上昇や生産者の権利が守られなくなるのでは? といった声もあるが、例えばぶどうの品種改良を行っている岡山県の『林ぶどう研究所』のnoteを読むと、この案は育種家の権利を守り、利益を増やすことでより良い品種を生み出すことができる。
そして苗を育てる苗業者の安定的な生産を助けられるといったメリットもあると書かれており、反対派が目立ちがちな中、肯定的な意見も数多くあるようだ。また、別の記事ではぶどうの生育に多忙な中、改正案についての質問にも非常にわかりやすい内容で回答されていた。
だが、育種家ではない生産農家はこの問題についてどういった考えを持っているのだろうか? しらべぇ編集部は、実際に九州でかなりこだわった栽培方法で生産農家をしている男性にメールで取材を実施した。
■生産農家からのコメント
「種苗法が改正されると、現在は購入種子の自家採種は公に許されているが、登録品種に関しては開発者の許諾を得なければ自家採種ができなくなる。
登録品種は物凄い勢いで増えている。 今回の改定案は地方公共団体で守られてきた在来種などの種情報を民間の種苗会社に開放し、最終的にはこれらを知的財産として民間企業(=種苗会社)が多大な利益を生み出す構造になる。
各自治体が守ってきた食料の安全保障を破壊する行為である。 例えば、鹿児島県で『桜島小みかん』というみかんがあるが、こういったものは県と生産者が一体となって手塩にかけて開発してきたもの。
それを民間に知見を提供してしまったら、ブランド価値がなくなり衰退してしまう。 何故こんな愚策を提案するのか? その根本には、政治家と大企業との密接な関係にあると言える。
例えば、私が以前勤めていた大手メーカーには大きな労働組合があり、幾つかの大手メーカー社員で構成されている。
この労働組合が特定の政党の議員と癒着し、選挙のときに労働組合から組織票を入れることで議員を当選させることに貢献している。 その見返りとして企業献金など特定の大企業に貢献することを守っている。
これらのグループが現代の既得権益層であり、彼らにとっては自分たちの利益を最大化することを常に考え実行しているにすぎない。 しかし今回のコロナ恐慌で明確に見えていることは、国内の食糧生産と安全保障を守っていくことである。
もし民間が種子の知的財産を握れば、それは確実に『ビジネス』となり最終的にはグローバル企業が遺伝子組み換えなどで特許化し、それらを独占・コントロールすることが目的となってしまう」