国体専門家とフランス人研究者が振り返る令和の一年 「不和や分断をいかに克服するか」
元号が「令和」に変わって一年。研究者たちは今の時代をどのように見ているのか。
■東京五輪は中止に
−−−−−令和の御代は今後、どのように進んでいくと思われますか?
金子:繰り返しになりますが、日本のみならず世界全体で第二次世界大戦の枠組が限界に達していると見ていましたから、令和の御代は日本社会が変化する過渡期だと以前から思っていました。
れいわ新選組やNHKから国民を守る党といった新興政党が国政選挙で議席を獲得しましたが、これもまた変化の一環でしょう。こうした変化は、今回のコロナ禍で促進されることは間違いありません。
国境を越えたヒトの流動によりウイルスの感染拡大を引き起こした以上、経済のグローバル化にはストップが掛かることでしょう。それとの関連で云えば、明年の東京オリンピックも遅かれ早かれ中止するよりほかなくなると思っています。
また、コロナ禍が招いた経済不況により少なからぬ失業者が生まれることでしょう。結果として、今以上に貧富の差が拡大することは間違いありません。
加えて、コロナウイルスの感染源とされる中国に対する風当たりが強まっていますが、当の中国は各国の国力が低下した今が好機とばかりに南支那海や尖閣諸島に対する軍事的圧力を強めています。対内的には経済的格差の増大、対外的には軍事的緊張の高まりという構図は、昭和初期と似ています。
各国がグローバル経済に幻想を抱くことなく、自力で国民経済を再建し、その上で共存共栄を図ることを私としては期待しますが、実際の方向性については何とも言えません。
■仏人研究者は「歴史が再登場した年」
國學院大學法学研究科博士課程で「フランス国体と日本国体の比較」を研究しているポール・ド・ラクビビエ氏は、グローバリズムの悪弊を懸念する。
ラクビビエ:令和元年(2019年5月〜2020年3月)は歴史が再登場した年です。疫病、恐怖、社会上の国家権力など(多くの国では総動員体制の復活、全体主義的な動き、宗教への弾劾−フランスでは特にカトリック−)。
新しい御代を迎えて、「和」を願いつつ、疫病の影響で、世界中、広まりつつ動揺と不安と軋轢、社会全体の堕落が表面しつつあります。
少子高齢化の中、疫病による死者は数百人になり、社会全体がパニックを起こして、”成長率しか狙わない偽りの政治”とも呼ぶべき経済主義が限界を露出させて、公を考え、共通善を重んじ、国民の圧力に負けてよくわからない動きをする本来の「政治」が欠如して、中国などの危険性、また、「グローバリズム」の悪弊を心配します。
令和の御代こそ、繁栄と調和の時代になってほしいと思います。
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(取材・文/France10・及川健二)