新型コロナで禁じられた中国の「ネズミ食」 予想される闇取引の危険性
野生動物を触る、殺す、肉をさばく、そして食べる。いずれの行為にも危険があるという認識を持ってほしい。
新型コロナウイルス感染症 (COVID-19)を含む、動物由来の感染症の源と疑われている野生動物たちを、長きにわたり販売してきた中国のウェットマーケット(生鮮市場)。
世界中から批判が殺到し、2月には当局も大々的な禁止条例を示していた。しかし「その後こそ心配」といった声も聞こえてきている。
■野生動物の取引が禁止に
中国の国会に相当する全国人民代表大会は今年2月、新型コロナウイルス感染拡大防止策として、野生動物の取引・消費をしばらく禁止すると決めた。しかし、まるまると太った「タケネズミ」を好んで食してきた人の多さが今、問題視されているという。
タケネズミは、コウモリ、センザンコウ、ハクビシンなどと並び、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)、あるいは類似のコロナウイルスを保有していることが指摘されている。
■愛され続けてきたタケネズミ食
タケネズミは平均の体長が45センチ、体重が5キログラムという大型のネズミで、その柔らかい肉は煮ても蒸しても、また焼いても美味しいと評判だった。
さらに「栄養価と解毒作用に優れ、胃や脾臓を強くする」との言い伝えがあるタケネズミ食は、中国では紀元前1000年よりさらに昔から愛されてきた。一匹あたりの売値は15,000円ほどで、年間約2,500万匹が取引されてきたという。
■野生動物は触るだけでも危険
そのタケネズミを養殖する業者は中国各地に点在するが、特に盛んなのは南部の広西チワン族自治区。貧困層の10万人以上がそれで生計を立てていたため、失業を恐れる人々により今後も闇の取引が続くとみられる。
懸念されるのは、取引禁止条例によって各地の保健当局の関与がなくなること。タケネズミの養殖は虫の駆除や除菌処理などの手間を必要とするが、それらの工程がなされず品質の検査や検疫を受けていない個体、そして危険な野生の個体まで混じってくる可能性が高まるのだ。
■ゲテモノ食いは中国の食文化
珍味かつ滋養強壮になると主張し、中国の人々はこれまでもさまざまな動物を殺して食べてきた。
新型コロナウイルスの最初のアウトブレークをみた湖北省武漢市にある「華南海鮮卸売市場」では、生きているロバ、シカ、キツネ、アナグマ、ラクダ、そしてゲテモノ好きにはたまらないヘビ、ネズミ、コウモリまでも販売されていた。
その事実に世界の多くの人々が身震いしているが、「長年愛され続けてきた食の文化と歴史は、そう簡単には変えられない」という声もじつに多い。
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(文/しらべぇ編集部・浅野 ナオミ)