ポストコロナのベーシックインカム思想 働けない人を支え合う社会とは
新型コロナ問題でときおり出されるベーシックインカムという言葉の奥深くに見いだせるポストコロナ社会を考察。
◾︎働けない人を支え合う
このような新型コロナの特徴において、基礎疾患がある人や高齢者は、新型コロナの予防接種ができるようにでもならない限り、社会活動に大きなリスクを負うこととなるのではないだろうか。
またもとより現代は、働けない人が悪いという言葉が以前ほどは言われない社会になりつつある。うつ病などの問題がクローズアップされてきているし、育児を代表にライフサイクルで働けない時期を保障するという思想が浸透しつつあるのだ。
◼︎「交差点型社会」
政治学者の宮本太郎教授は、学校に行き、働いて、老後を迎える「一方通行型の社会」から、再び教育を受けたり(リカレント教育)、家庭で家事や育児をしたり、職場を変えたり、高齢者や障害者としても社会参加ができる「交差点型社会」を提唱する。
人間は企業にとっての商品ではないという「脱商品化」を促す。また教育には就業前教育や職業訓練も含まれる。職を変えやすいのは現代の産業構造転換が求められる資本主義経済と適合的で「交差点型社会」は経済と反発し合うものではない。
◼︎ポストコロナのベーシックインカム
ポストコロナの時代は、働けない人を支え合い、必要ならば再び働けるようにする社会を促す。ベーシックインカムは、一時的にせよ働けない人々を支える制度として必要なものだ。ベーシックインカムといってもさまざまある。
働くことを促す為の補助的なワークフェア補強型ベーシックインカムから、働くに限らず社会参加を促し「社会的包摂」を目指すアクティベーション連携型ベーシックインカム。
また、年金などの一律廃止をせず、所得に応じて税をとる代わりに給付を行う給付付き税額控除。ポストコロナの時代としてこのような広義のベーシックインカムの議論が進まねばならないだろう。
・合わせて読みたい→暴走か最適解か 新型コロナに対処する安倍政権の戦略とは
(文/メディア評論家・宮室 信洋)