ネコは新型コロナウイルスを運びやすい? 中国の実験結果に波紋広がる
新型コロナウイルスには動物も感染することがわかってきた。ペットとの生活を楽しむ人たちからは不安の声もあがっている。
先月中旬、新型コロナウイルスに感染したイヌが死亡したことが香港から伝えられ、世界のペット愛好家たちを不安にさせた。海外ではヒトの身近にいる、あるいは飼育されている動物に関する感染の研究が進んでいるが…。
■5種の動物で実験
「イヌ、ネコ、ニワトリ、ブタ、アヒルで実験してみたところ、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に感染する率がネコはイヌ以上に高いという結果が得られた。」
査読・受理がまだという「プレプリント」の状態にある生物学の論文を公開する『bioRxiv』に3月31日、そんな興味深い論文が寄せられたことを英語版の『ネイチャー』誌が伝え、愛猫家の間で波紋が広がっている。
■投与後の糞便を調べる
その実験を行ったのは、中国・黒竜江省ハルビン市にある「中国農業科学院哈爾浜獣医研究所」のウイルス学の研究チーム。
それぞれの動物について投与後の糞便に排出されるウイルスの差を調べた結果、「新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染率でいえばネコが高く、感染した場合ほかのネコにうつす可能性があることもわかった」という。
さらに、「イヌは同ウイルスには感染しにくい」「ニワトリ、ブタ、アヒルが感染する可能性はほぼない」などとまとめられた。また、感染が判明したネコでも発病した個体はいないという。
■疑問を投げかける専門家も
ただし、明らかな結果が得られるよう実験では高用量のウイルスが投与されていたほか、準備された動物はそれぞれ数匹ずつとサンプルは少ない。
そのため、この論文には疑問を投げかける専門家も多い。通常のウイルス量で考えれば、ネコも「感染しにくい」と言えるとのこと。媒介・蔓延の要因になるなら飼っている愛猫を手放さなければ、などと考える必要はなさそうだ。
もっとも実際にベルギーではネコ、香港ではイヌ2匹の感染が判明している。飼育環境、飼い主との濃厚接触、散歩ルートの衛生状況などに差があり、感染経路も様々だという。
■適切な距離感を守って
米・疾病予防管理センター(CDC)はペットがいる家庭に対し、互いの感染を避けるためにも接触をなるべく控え、食べ物を口移しで与えたりしないよう呼び掛けている。
ちなみに新型コロナウイルスにおける実験で多用されているのはイタチ科の哺乳動物フェレット。インフルエンザの治療薬やワクチン開発の実験においても欠かせないという。
ウイルスへの感受性は動物ごとにやはり差があるのだろう。「中国農業科学院哈爾浜獣医研究所」の論文は今、専門家による厳密な査読を待っているという。
・合わせて読みたい→体調不良が続く男性 「新型コロナウイルスに違いない」と家族を思って自殺
(文/しらべぇ編集部・浅野 ナオミ)