体調不良の急患を「若者のコロナ」と軽視か 死亡した男性はマラリアだった
コロナ・パニックが起きている大病院の救急医療室。急患で運ばれたある若者がそこで無念の死を遂げた。
今、この状況下で海外旅行から戻った者が強い倦怠感や発熱を訴えたら、誰もが「新型コロナウイルスに感染か」と考えてしまいがちだ。だが急激な体調不良に襲われる深刻な病気は他にもたくさんある。
■海外旅行後の体調不良
英国・ロンドンのサウスフィールズでバリスタとして働いていたダヴィデ・サポリトさん(28)。アフリカ東海岸のザンジバル諸島で過ごした休暇から戻った3月9日、急激な体調不良に襲われて38歳の姉に連絡した。
姉は弟の容体が思った以上に深刻だと直感。海外旅行帰りということもあり、救急車を要請しようと医療ヘルプラインのNHS 111番に連絡してみた。
■脳マラリアだった
だがNHS111も従来の緊急通報番号の999も、まるでつながらない。ダヴィデさんの姉は2日間にわたり何度も電話してみたが、いくら待ってもまったく順番が来なかった。
そして11日、1時間48分も待たされてやっと電話がつながったものの、ダヴィデさんは搬送先のセントジョージ病院で2日後に帰らぬ人となった。
足の動きがおかしく「目が見えない」と訴えるようになっていたダヴィデさん。脳障害が疑われた彼は、その後の検査で脳マラリアに侵されていたことが判明した。
■大流行が始まった英国
日本時間の3月22日午後1時現在、5,000名を超す新型コロナウイルスの感染者と233名の死者が確認されているイギリス。1週間ほど前から感染者が急増したロンドンでは、感染者が間もなく2,000名を超えるとみられ、どの病院も今はその対策と治療に追われ殺気立っている。
メディアの取材に応じたダヴィデさんの姉は、「弟はしっかりとしたマラリアの治療を受けたようには思えない」と病院に対する不信感をあらわにするとともに、緊急通報がパンク状態であることにも強い危機感を覚えたと語っている。
■コロナ以外の急患もいる
病院も緊急通報指令室のオペレーターも、まずはダヴィデさんの最近の海外渡航歴や行動を確認していた。
そのためダヴィデさんがまずは「コロナか否か」と疑われ、「たとえコロナだとしても若者だから大事には至らない」などと勘違いされ、急患でありながら後回しにされてしまった可能性はゼロではない。
この状況下でなければダヴィデさんは助かったのではないか。姉は今、そんな悔しさや無念さと闘っているという。
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(文/しらべぇ編集部・浅野 ナオミ)