新型コロナ対策でチーズ製造法も変わる? 感染者2万名を超えるイタリアで自助努力
新型コロナウイルスの蔓延で経済活動がいきなり停滞しているイタリア。名産のチーズを手掛ける酪農農家も危機感を募らせている。
「イタリア・チーズの王様」と呼ばれ、チーズ好きに愛されているパルミジャーノ・レッジャーノ。新型コロナウイルスの蔓延に苦しめられているイタリアだが、このチーズの生産者らの心意気、助け合いの精神が「素晴らしい」と話題になっている。
■品質管理に厳しい検査
パルミジャーノ・レッジャーノは、イタリアが誇るチーズのひとつで、平均で18~36ヶ月、長ければ5年以上の熟成を要するハードチーズ。特徴の白い斑点はアミノ酸が結晶化してできるものだ。
原産地名称保護制度(DOP)がチーズの品質や衛生管理状態を検査しており、「パルミジャーノ・レッジャーノ」と名乗ることが許されるのは、彼らが定めた基準を満たす商品だけ。シーザーサラダやカルボナーラソースなど、日本人にも馴染み深いチーズだ。
■封鎖措置の影響を最小限に
そのパルミジャーノ・レッジャーノは、イタリア北部に位置するロンバルディア州とエミリア・ロマーニャ州の名産品だ。
しかし日本時間の3月15日午後4時30分現在イタリアでは感染者は計21,150名超にのぼり、特にこの2州の肺炎患者の増加は深刻。致死率が高いことにも注目が集まっている。
イタリア全土におよぶ封鎖措置の中でも、その影響を最小限に食い止めようと人々は様々な分野で「自助努力を」と立ち上がっているが、パルミジャーノ・レッジャーノの生産者共同組合もそのひとつだ。
■「朝1度だけ」のこだわりを…
国内外に大変な需要があるにもかかわらず、小規模な酪農経営者たちが手掛けているというパルミジャーノ・レッジャーノ。新型コロナウイルスの感染者が出れば、その農家では製造の停止を余儀なくされ、生産量が減少すれば価格もいっきに上昇するだろう。
こうした事態を避けるためにも、協同組合では作れる時に大量のチーズを作っておこうと朝、午後、夕方という1日3度のチーズ製造を考案。長年続いていた「朝搾った牛乳で1日1度だけ製造」というこだわりを、今だけは大目に見てもらおうといったところだ。
■引退した職人も総出で
さらに生産者共同組合では引退しているチーズ職人やボランティアを募り、連絡先リストを作成。1日3度の製造で人手不足が心配される場合は、その農家への支援を要請するという。
EUやイタリアDOCの原産地名称保護制度はきわめて厳格な検査で知られるが、未曾有の事態を受けてDOCも「今は特別に」と生産者共同組合の要望を聞き入れる模様だ。EUの同制度に対しても寛大な措置を講じるよう期待されているという。
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(文/しらべぇ編集部・浅野 ナオミ)