イタリア・新型コロナ医療現場が大荒れ 「助かる若い患者優先」も現実的に
新型コロナウイルス感染者が数日で急増し、中国に次いで1万人を突破したイタリア。現地の病院関係者からのコメントにより状況が見えてきた。
世界保健機関(WHO)が、ついに世界的流行となる「パンデミック」を宣言した新型コロナウイルス。日本時間の3月12日午前10時30分現在で感染者12,462名、死者827名と報じられているイタリアでは、医療従事者のリアルな声が大きな話題となっている。
■集中治療室が定員オーバー
財政赤字の削減を目的にここ5年間で700を超す医療機関が閉鎖に追い込まれ、医薬品も不足、医師も看護師もそれぞれ5万人以上が不足という最も悪い状況下で新型コロナウイルスとの闘いを強いられているイタリア。
各地域の拠点医療機関では新しい感染者や患者が増え続け、中国に次いで感染者が1万人を突破。集中治療室のみでの対応が困難になると手術室や回復室を利用して患者を隔離する病院まで現れている。
■人々の不安をよそに…
新型コロナウイルスの感染拡大が収まらないイタリアでは、20州すべてで感染者が出たことを受け、それまで北部のみが対象だった人々の移動制限措置が10日から全土に広げられた。
医療スタッフが感染する例も相次ぎ、戦力そのものが弱体化している医療現場。人々はしっかりとした治療を受けられないのではという不安を募らせているが、それがいよいよ「患者のふるい分け」という形で現実味を帯びてきたようだ。
■パンク状態なら「助けられる命」が優先
最も多くの感染者数を出しているロンバルディア州のミラノの大きな病院で働く医師は、「倫理上の問題はあるが現実的な話として、助かる見込みの低い80代以上の高齢者や基礎疾患がある者ではなく、若く健康な患者を最優先で治療するようになる」とコメントしたと各メディアが報じている。
財政面ではイタリアのなかで最も裕福で、最新設備の医療システムが揃っているロンバルディア州。しかしベルガモ、ローディ、パヴィーア、クレモナなどの病院はどこもほぼパンク状態で、提供される医療技術も医薬品も不十分と言わざるを得ないという。
■治療が先着順ではなくなる
大事故や災害などでいっきに大量の患者が出た際、個々の患者の緊急度で治療の順番が決まることを「トリアージ」という。
ベルガモやクレモナの病院に勤務する医師2名は、メディアの取材に口をそろえて「患者数のいきなりの急増でトリアージが起きている」「先着順の法則は崩れ、高齢患者は後回しだ」などと話している。
もし他の国や日本でも急激に患者が増加すれば、同じようなことが起きる可能性はあるだろう。
・合わせて読みたい→新型コロナウイルス感染の妊婦が赤ちゃんを出産 「最初の検査では陰性」
(文/しらべぇ編集部・浅野 ナオミ)