妻の首にネクタイ、自分の首を包丁で切りつけた夫の裁判で見えた「老老介護」の深刻さ
昨年8月、妻の首をネクタイで絞めて殺害しようとし「殺人未遂罪」に問われた77歳の夫に対する裁判員裁判が、先月大阪地裁で行われた。
妻の首をネクタイで絞めて殺害しようとした疑いで「殺人未遂罪」に問われた77歳の夫に対する裁判員裁判が、先月大阪地裁で行われた。この裁判で報道やネットでは「老老介護」について話題にのぼっている。
■長女へ遺書「元気でがんばってよ」
事件は昨年8月、夫婦が住む大阪府にあるUR団地で起きた。夫は妻の首にネクタイを巻きつけて絞めた。その後、ベランダに出た夫は包丁で自分の首を切りつけて自殺を図ったそうだ。意識が戻った妻がベランダで倒れていた夫を発見し、近所の人らへ通報を依頼したという。
夫は6年前にがんの手術をして以来、思い通りに体を動かせなくなり、その2年後に妻が認知症になってしまった。不自由な体での介護に便箋やノートに「つらい」「もうあかん」と綴っていたそうだ。
長女には、「2人とも持病がいっぱいある。ぼけたらみじめ。一緒に責任を果たす。1人になっても元気でがんばってよ」と遺書とみられるものも見つかったという。
■3割が「超老老介護」
地裁は、認知症の妻を介護しており「老老介護」の末、思い詰めていた経緯は「十分に酌むべき」として、懲役2年6月、執行猶予4年(求刑懲役4年)を言い渡した。
厚生労働省が平成28年に実施した「国民生活基礎調査」によると、65歳以上の夫婦や親子、兄弟姉妹など配偶者が介護する「老老介護」が54.7%と過去最多を記録。75歳以上の後期高齢者同士の「超老老介護」世帯は、はじめて3割を超えたそうだ。