小林よしのり氏スタッフと立憲民主党がバトル? 「アイヌヘイト論争」をめぐって
「アイヌ利権」「アイヌヘイト」といった言説に「小林よしのり氏が関係している」という記事を立憲民主党がRTしたことで波紋が拡がっている。
■古谷氏の論説とは
古谷経衡氏は11月29日、講談社系列のニュースサイト『現代ビジネス』で『ネットを徘徊する怪物「差別的デマ」は、いま誰を餌食にしているのか』という記事を書いた。
問題となったのが下記記述である。古谷氏は在日特権の理論が破綻し、アイヌ特権・攻撃にネトウヨが移ったと論を進める。
「そこで(在日特権の)代わりに登場したのが『アイヌ特権』という新たなデマである。『民主党政権=在日政権』という巨大な敵を喪失したネット右翼が、次なる標的として苦し紛れに創作した、『在日』に代わる仮想敵——この動きは、おおよそ2014年〜2015年にネット右翼界で最盛期を迎えた。
『アイヌ特権』とは何か? それは、北海道の先住民であるアイヌ民族が、和人(日本人)に陵虐された、という被害者としての立場を利用して、様々なアファーマティブアクション(弱者集団への優遇措置)を享受している——という内容であった。
この運動の最前衛に立ったのは、漫画家の小林よしのりであった。小林は『アイヌ民族など存在しない』というトンデモな主張を繰り返し、『アイヌは北海道の先住民ではない』という妄想を漫画やブログで発表した」
「特に『アイヌ民族は存在しない』という持論については、学術的な根拠を何ら示さないばかりか、『殖産の時代、アイヌ民族は自らを「アイヌ」と自称していなかったから』という屁理屈を展開し続けた」
「民主党政権から第二次安倍政権へ——。本格的な保守政権への交代を経験し、『敵』を見失ったネット右翼界隈にとって、この『アイヌ特権論』はさしずめ『恵みの雨』であった。
結論からすれば、アイヌが北海道の先住民であることは近世以降のあらゆる歴史書からも自明で、ネット右翼界隈で繰り広げられた主張は近世史家、アイヌ研究者らによって一笑に付されている。
よりによって、彼らに特権など存在しないことは当然、わかりきったことである(私も北海道出身だが、アイヌ特権など聞いたことがない)。
が、「敵」に飢えていたネット右翼は、刹那この小林の『アイヌは存在しない』『アイヌは北海道の先住民ではない』というでっち上げに寄生し、俄かにアイヌへの呪詛を開始した」
■「でっち上げ」による攻撃
この記述にはいくつも問題がある。まず、「殖産の時代、アイヌ民族は自らを『アイヌ』と自称していなかったから」と小林氏が述べたことになっている。
しかし、筆者も小林氏がアイヌ論を書いた『ゴーマニズム宣言NEO2』を読んだが、そのような記述はない。小林氏の発言をでっち上げてまで攻撃する。滑稽極まりない。
次に「特に『アイヌ民族は存在しない』という持論については、学術的な根拠を何ら示さない」という部分。
『ゴー宣NEO2』では、小林氏が北海道で取材する様子や、アイヌ関連の専門書を買い込んで議論を進める過程、北海道ウタリ協会の『アイヌ史』編集委員も務めた文化人類学者の河野本道氏に直接会って、話を聞いていることも書かれている。
河野氏は、「もともと、『アイヌ民族』というのがあったわけじゃないんです。『樺太アイヌ』にしても『千島アイヌ』にしても自称じゃないんです」と述べている。