閣僚は次々と辞任し、パリでは激しい大規模デモ 低支持率に悩むマクロン大統領の行く末
昨年の仏大統領選挙で30代の若さにして当選を果たしたマクロン氏。当初7割に迫っていた支持率は2割台に低迷し、閣僚の辞任も相次いでいる。
パリから1500キロ離れた東プロシアにあるドイツ国防軍最高司令部の掩蔽壕の中で、ヒトラーがテーブルを叩き怒号した。そして、ヒトラーは繰り返した。
「今、この瞬間、パリは燃えているのか」
1944年8月25日のことだった。ヒトラーの部下たちは心持ちした。言うまでもなく、パリは炎上しなかった。ヒトラーの命令でパリの至る所に爆弾が仕掛けられたが、爆弾の爆破装置は作動しなかった。
ドイツ軍占領下のパリ防衛の責任者・フォン=コルティッツ司令官が、あまりにも美しいパリの街並みを木っ端微塵に破壊することに良心の呵責を感じ、命令に従わなかったのだ。あれから74年が経った。じつは今、パリが燃えている。
■マクロン支持率は23%まで低下
昨年の5月に39歳の若さでフランス大統領に就いたフランスのエマニュエル=マクロン氏が燃料税増税方針を先月、発表した。それに端を発して抗議デモが全国各地で勃発し、、パリで一部が暴徒化し、建物が破壊され車両が炎上する事態にまで発展した。
マクロン氏は減税などで大企業や富裕層を優遇してきた。マクロン氏は「金持ち大統領」と批判されてきた。庶民の怒りは頂点に達し、社会の不平等に対する不満が爆発。支持率は発足一年半年で66%あった支持率が12月4日の調査では23%まで落ちた。
政権は苦境に立たされている。マクロン氏は11月27日の演説で「怒りを受け止める」と述べた。しかしながら、来年1月に予定されている燃料税増税は撤回しないと表明した。
しかし、政府は市民の高まる怒りをこれ以上無視できないと判断し、エドゥアール=フィリップ首相が12月4日、増税の導入延期を発表する方針を固めたとメディアは一斉に報じ、事態の収拾を図る方向へ転換した。
■デモ呼び掛けが拡散
SNS上では、4回目となる8日のデモ開催の呼び掛けが拡散している。政府はこれ以上の混乱を防ぐため、デモ運動側との対話の糸を探っている。ただ、デモは誰かが指導者ではなく、自然的に発生して大規模デモとなった。誰が代表を務めるのかさえ分からないのが実態だ。
賛同者の主張もあまりに多様で政府は対策を立てられない。デモは、自動車運転者に携行が義務付けられている安全ベストを参加者が着用することから「黄色いベスト運動」と呼ばれている。
■ボディガードの暴行疑惑で炎上
フランスは7月14日の革命記念日が終わると、9月の第一月曜日までバカンスに入る。しかし、今年は違った。いわゆる「ベナラ疑惑」が発覚し、バカンスだというのに国会は開き、追究されたのだ。
エマニュエル・マクロン仏大統領の側近が、5月1日(メーデー)デモ参加者に暴力を加えていた疑いで訴追された。暴力行為はソーシャルメディアに投稿された動画で明らかになった。
マクロンの私的ボディガードのアレクサンドル・ベナラ氏が5月1日のメーデーの参加者にベナラ氏は集団暴行に加担したほか、警官バッジをつけるなどして警官になりすました疑いなど、3つの容疑に問われた。暴行シーンは撮影され、SNSで拡散し、大スキャンダルとなった。
動画では、数人の警官が暴行を制止せず眺めている姿が映っていたため、世論の怒りが拡大。大統領府は、事件について承知していながらしばらく放置し、問題をもみ消そうとしたことで「お仲間擁護」だとして、厳しい非難にさらされている。