骨折しても「松葉杖使うな」と立ち仕事を強要 ブラック保育施設の恐るべき実態とは

民間経営の保育所も増えているが、中には保育士に過度の負担を強いる職場も。

■ストレスから心療内科へ

主治医に禁止された働き方を強いられたNさんの骨折は治癒が長引いたそう。それに対しても辛辣な言葉が投げかけられた。

「安静にすることすらできず痛みは増すばかりなのに、『いつになったら治るんだ、遅すぎだ』と毎日毎日言われるようになりました。担当医も『仕事をしている』と伝えると驚いていました。


『保護者の前では松葉杖を使わずに行動しろ』とも言われ続け、精神がボロボロになりかけていたので、心療内科にも通いました。辞めたいと思っても口に出せず、毎日毎日影で泣きながら耐えました。


怪我から2ヶ月して夏祭りイベントがあり、足が痛むのを誤魔化しながら準備も行い、当日ももちろん杖は使うなと言われていたので痛みを押さえつつ乗り切りました。


後日、我慢の限界を超え、心療内科の先生に診断書を用意してもらい休職をしました。ようやく休める、と同時に、もう戻りたくない、という気持ちがあったため、そのまま退職を迎えました。


あのまま続けていたら間違いなく精神は崩壊していましたし、恐らく死を選んでいたと思います。無関係の子供を嫌いにもなりたくありませんでした。辞められた今でも勤務地には近づけません」


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■弁護士の見解は

早野述久弁護士

待機児童問題にも直面する保育業界で大きな苦しみを受けたNさんだが、この企業にはどのような問題があったのだろうか。鎧橋総合法律事務所の早野述久弁護士に聞いたところ…

早野弁護士:Nさんのような事態が起きる背景には、保育士の恒常的な不足が挙げられるかもしれません。


しかしながら、仮にこうした背景があったとしても、会社側の安全配慮義務が免除されるわけではなく、食物アレルギーのある人にその食物に触れることを強要し、不慮の事故により十分に勤務できない従業員を精神的に追い詰めて良いということにはなりません。


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■アレルギーのある人にその食物を扱うことを強要

早野弁護士:そもそも、会社には安全配慮義務があり、労働者の安全と健康を確保しなければなりません(安衛法3条1項、労働契約法5条)。


Nさんは、入社時に会社側に食物アレルギーがあることを伝えていたことから、会社側には一定程度の配慮が必要であったと考えられます。


例えば、会社側のマネジメントとして、作業分担を変えることでNさんがその食物に触れることがないようにすることは容易に可能だったと予想されます。


しかし、結局は、アレルギーのある食物を触ることを強要され、その食物が出るたびに「何もできない」というNさんの人格を否定する発言があったようですので、会社側の安全配慮義務違反や嫌がらせ・ハラスメントが認定される可能性があります。

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■会社側の業務内容における配慮の欠如