確実に美味しいものを造る努力 新潟利き酒ランキング58ヶ月連続1位の人気酒造『越後鶴亀』
駅に設置されているため人気のスポット『ぽんしゅ館』。そこで高評価なのが『鶴亀』だ。
■攻めの姿勢が美味しいお酒を生む
越後鶴亀では毎年1本、「チャレンジ仕込み」がある。造り手に探究心なくして発展なしという考えからだ。
「社長はいつも、確実に美味しいものを造ろうと言われます。美味しく造る心構えは、できたての酒をフレッシュローテーションで出すことです。
普通、1年、2年寝かして出荷する生酛を、絞った2日後には瓶詰め。じつはこれが大人気」
と話すのは杜氏の横田伸幸さん。国家資格である1級酒造技能士検定を首席で合格した頼れる社員だ。社長からチャレンジ仕込みを課題にもらって以来、新潟では希少な造りに挑戦している。
その一つがワイン酵母の日本酒。開発に3年を要したという。
「酵母選びが大変でした。星の数ほどある中からコメに合う酵母を探し、見つかって仕込んでもアルコール度が上がらない。難しかったです」
ワイン酵母の日本酒を造っているのは、日本酒蔵のわずか1%というのも事実。しかし苦労の甲斐あって、1年分が3日間で完売したという。開発者冥利に尽きる結果と言えるだろう。
「社長は『日本酒もかっこよく飲もう』と言って、ロゴ入りのワイングラスも作ることになりました。ライトな感じの日本酒はワイングラスに似合い、和洋折衷の雰囲気も好評の要因だったようです」
当初、県内のみの試験販売だったが、売れ行き好調につき2016年から全国販売されている。
■山廃造りへの挑戦
もう一つは山廃仕込みの酒である。自然界に存在する天然の乳酸菌の力を借りて、屈強に育った酵母が醸し出す酒だ。通常の酒造りに比べ、手間も時間も要するが独特の風味や酸味の効いた酒になる。
「新潟には前例が少なく、はたしてこの環境で可能なのか不安でした」と杜氏。
旨みが持続し酸味がしっかりとした後味を残す酒にしたいという一念は、円熟した厚みのある酒を生み出し、『越後鶴亀 山廃純米原酒』は「ワイングラスでおいしい日本酒アワード」での最高金賞につながった。