郷愁と安らぎの魚沼の里 米と自然を活かす『八海山』の技

八海醸造がつくる『八海山』といえば、全国でも屈指の人気と知名度を誇る。

■米を使いこなしてこそ思い描く酒の味に

八海山

八海山の酒造りで大きな特徴と言えるのが、使用するコメが単一ではなく、ほぼすべての酒で2種類以上を組み合わせて使用されていること。

酒造好適米では、五百万石を主軸として、(同社でいう)高級酒には美山錦、山田錦、越淡麗。一般米では、トドロキ早生をメインにこしいぶき、ゆきの精という7品種。

造る酒の品質設計に合わせて、ほぼ、すべて組み合わせて使用しているという。 麹米と掛け米で使い分けているのはよくあることだが、それに加えて、酛作り(酒母造り)、三段仕込みの初回、2回目、3回目でも変えているのだという。

組み合わせるということは、そこで起こる様々な反応を知り尽くして利用しなければならない、その必要がある、ということだ。なぜ、そこまでするのだろうか。杜氏であり、常務取締役製造部長の南雲重光さんは語る。

「新潟は淡麗な酒です。軟水~極軟水がほとんどなので、必然的にさっぱりした軽い味わい、柔らかなめらかな口当たりの酒になり、それが、新潟の食にも合う。


しかし、淡麗なだけでは、日本酒本来の味わい、旨みが薄れてしまう。そのために一般米を使うことで米の旨みを引き出す。山田錦を使うことにより柔らかさと含み香を醸す。淡麗であることのみを追求するのではないところに、日本酒の奥深さがあると思うんですよ」


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■判断する人の力が要

八海山

それにしても、飯米を炊くだけでも、米に合った水分量や給水時間がある。それ以上にデリケートな酒造りにおいて、数種類の米を使いこなすのは容易なのだろうか?

「そこは、当社95年間の酒造りの蓄積があります。それに私たちは、加工業の技術屋で発酵の職人ですから、それぞれの状態に合った処理の仕方を知っています。対処する腕を持っている。


どうにかして素材を使いこなす技術と知識を持っているんです。同じ米だって硬い年も柔らかい年もある、毎年違う。そちらのほうが大変です。機械化されてもその判断は人間がしなければならない。でも、それが日常なんです」


淡々と話し始めながら、次第に力が入ってしまうその言葉には、日本酒へ愛情や思いと同時に、新潟の酒を俯瞰して判断しようという思いもにじむ。

この思いが、様々な米の旨みで複雑な味、深みのある味を引き出しているのかもしれない、

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