上杉謙信の故郷で地元に愛される酒を 『スキー正宗』という名はなぜ生まれたのか

『スキー正宗』という名前の由来は、100年以上さかのぼるスキーの歴史にあった。

■大河ドラマ『天と地と』で脚光を浴びる

スキー正宗

1965年には新銘柄『春日山 天と地』が生れる。大河ドラマ『天と地と』にも登場する戦国武将・上杉謙信の居城から命名された。ドラマのロケ時には謙信役の石坂浩二が蔵見学に訪れたという。

広く知られるように、上越市は戦国時代、天才的な軍略の才で越後国を統一した上杉謙信のふるさと。居城であった春日山城、少年期に薫陶を受けた春日山山麓の林泉寺、謙信を祀る春日山神社などゆかりの場所が残っている。

その謙信で知られる越後国にあるのに、武蔵野酒造と名づけたのにはどんな経緯があったのか。

「当社の創業は大正5年になっていますが、じつはもっと古い歴史があるのです。年代は明らかではありませんが、越後出身の創業者が江戸で修業したので、武蔵野の名がつけられたと伝わっています」


また、武蔵野には「野見尽くされぬほど広大な平野」の意味があり、それに引っかけて「飲み尽くされぬほど大きな杯」との意を込めて名付けたらしいという。

「『スキー正宗』は日常楽しむリーズナブル酒が中心ですが、新銘柄にはそれに加えて純米吟醸や大吟醸もラインナップされています。日本酒度は平均+5で、『スキー正宗』よりもスッキリ辛口に仕上がっています」


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■他社に先駆けて大吟醸酒にチャレンジ

スキー正宗

すると昭和40年代に立ち上げたブランドに、吟醸造りを構想していたことになる。

「坂口謹一郎先生が当社の顧問だったこともあり、先生のご指導の下、県内でも早い時期から大吟醸を造り始めました」


坂口謹一郎博士は高田の出身で、応用微生物学の世界的権威。わが国の醸造学・発酵学に、いち早く生化学的視点を導入して応用微生物学を発展させたといわれる。

東京大学応用微生物研究所初代所長および同大学名誉教授を務め、「酒の博士」としても知られた。著書に『世界の酒』『日本の酒』『古酒新酒』などがある。

2016年、上越市頸城区に「坂口記念館」が開設され、博士の功績と人となりを偲ぶ縁の数々が集められている。

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■徳川家康から流れる歴史の中で