地酒の名に恥じぬ個性ある酒を チャレンジ精神が多様なブランドを生む塩川酒造

新潟大学のある街で、挑戦的な酒づくりが続く。

■米国人の舌をとらえた山廃仕込み

越乃関

『願人』はすっきりした旨みとしっかりした酸味、やや高めのアルコール度が持ち味。ある日、蔵を訪れた米国人が、このお酒を試飲してステーキに合う酒質と絶賛した。

「彼はサンフランシスコで米国初となった地酒専門店を経営していて、この酒の米国版を輸出しないかと提案してくれたんです」と、塩川さん。

こうして『願人』をベースに、辛口に仕上げて誕生したのが『COWBOY YAMAHAI』。アーリーアメリカンを連想させる「カウボーイ」と、日本酒の古典的な醸造法を表す「山廃」が併記された、なんとも斬新な酒銘だ。

名付け親はかの米国人。日本酒の米国市場「開拓」スピリットをこの名に込めたそうだ。ほどなくロスで開かれた国際的品評会、インターナショナル・ワイン・コンペティションでは、この酒がゴールドメダルを獲得した。

「日本国内でも広く肉料理にマッチすると評価され、ステーキハウスや焼肉専門店など日本酒の取り扱いが少なかった業界でも、需要を広げています」


蔵の山廃への挑戦は確かな手応えをもたらしたようだ。


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■狙うはヨーロッパのワイン市場

『COWBOY YAMAHAI』と対を成すように開発されたのが『FISHERMAN SOKUJO』。真っ赤なボトルに描かれているのはワタリガニの一種、イチョウガニ。

魚料理全般に合うように造られているが、とりわけエビやカニなどのシーフードとベストマッチする。白ワインのようにフルーティーな香り、軽やかな甘みを備え、山廃に比べると速醸ならではの爽やかさが感じられる。

「米と麹と醸造の技法を駆使することで、どんな風味も創り出せる日本酒の可能性を証明したかったんです」と、塩川さんは意気込む。

このお酒はヨーロッパのワイン市場を意識して開発された。カウボーイのリリースで海外からの問い合わせが増えたことも、引き金になったようだ。

「カウボーイもフィッシャーマンも、現地の食生活に溶け込む日本酒の新しい可能性を探るもの。そのために海外でも受け入れられやすいラベルを工夫しました」


ラベルには日本酒を意識せず手に取ってもらい、食との相性をダイレクトに伝えられるデザインを採用したという。

これらの意欲的な試みは、農林水産省の「日本酒輸出の優良事例」に取り上げられた。 アメリカ、イギリスほか香港、インドネシア、カナダなどへ出荷量の17%を輸出している。

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