山桜から見つけた「奇跡の酵母」 料理を邪魔せず心を癒し和ませる『弥彦酒造』の酒
弥彦山に生える山桜から奇跡的に見つかった天然酵母で醸す小仕込みの蔵元。
■神さまがくれた天然酵母
古代米である「愛国」。この愛国を復活させたのは大井さんと地元有志である。
「農業から醸造まで全て弥彦産のもので酒を造ろう」という思いのもと、地元の農家や酒販店、農協など多くの有志が集い、「弥彦愛国プロジェクト」が結成された。
「愛国は昭和初期まで一世風靡をした米。新潟でこの愛国を復活せずして何が清酒王国だと思った。他の誰もほぼ扱っていない酒米ってロマンがあるじゃないですか」
愛国の稲の背丈はかなり高く、ちょっとした風でも倒伏してしまう。しかし苦労に苦労を重ねても復活させたのは、今の酒米にはない魅力があるからだと熱く語る。
「種籾10gから始まった愛国作りも弥彦村に定着し、村人もうちの米という自信がついた。酵母も弥彦山に1本自生する弥彦桜の花びらや樹皮から見つけた天然の弥彦産酵母。
天然酵母が見つかるのはほぼ奇跡に近い確率だけど、この弥彦桜の酵母は2年目で見つかった。神がかっているでしょう。弥彦神社の神さまからのお裾分けですね」
■オール弥彦産のお酒で村おこし
この酒は『弥彦愛国』と名づけられた。黄金色に染まる村の田圃をイメージしたラベルに描かれた文字は弥彦在住の書家、田中藍堂氏によるもの。
ラベルの和紙は地元の子供たちが1枚1枚、手漉きで作ったもので、ひとつとして同じものはない。
「生まれ育ったこの故郷を今一度、慈しんでもらいたいし、村外の人には弥彦の地の面白さ、素晴らしさ、村の心を感じてもらいたいという願いを込めています」
愛国の育成にはクラウドファンディングを利用しており、援助のリターンとして、田植えや草取り、稲刈りには体験ツアーも組んでいる。
「僕は造り手であると同時に弥彦村民としての矜持がある」と、大井さんが醸す弥彦らしい地酒の物語はまだまだ続く。
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