山桜から見つけた「奇跡の酵母」 料理を邪魔せず心を癒し和ませる『弥彦酒造』の酒
弥彦山に生える山桜から奇跡的に見つかった天然酵母で醸す小仕込みの蔵元。
「今、良い酒はどんな蔵でも醸せる時代に突入しているんですよ。だから、テロワールを含めた凄い酒を醸さないといけない」
強烈なアッパーカットを見舞うのは、弥彦山の麓に蔵を構える弥彦酒造の製造責任者でもある大井源一郎 専務取締役である。
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■普通酒を一番大事に
弥彦酒造は天保9年創業。初代が独自の酒造法『泉流醸造法』を確立し、多くの蔵人や杜氏を育てた老舗蔵である。
「酒は人を楽しませるもの。美味いに終わらず、料理の邪魔をせず、飲む人の心を癒し和ませる酒。うちで造る酒はそれ以上でもそれ以下でもありません。 この蔵は『助演男優賞の酒』を造る蔵なんだ」と話す大井さん。
「純米大吟醸、純米吟醸が美味いのは当たり前。でも一番美味くないといけないのは普通酒です」
食事で言えば、料理が主役で酒はあくまでも脇役であり、「目立つことはいけないのだ」と。
一般的に、湿度や温度をしっかり管理できるサーマルタンクは、純米大吟醸や純米吟醸などに使われることが多いが、こちらでは普通酒と特別本醸造専用タンクである。
「僕は、普通酒を大事にしないとダメだと思う。普通酒は、原料や価格においても安価。安価=良くなくてもいいという感覚はナンセンス」
「誰もが気軽に飲める普通酒の出来が悪いと、他の酒がいいはずがない。普通酒こそ大事にすべきで、品質もきちんと管理すべきだ」と強い信念を見せる。
■寒い冬だけの小仕込み造り
大井さんをはじめ、ほとんどの蔵人が一級酒造技能士という資格を取り、丁寧な手造りで厳寒期だけの小仕込みを行っている。
「儲けすぎはダメ。黒字になるかどうかの瀬戸際がベスト。人のキャパを超えた造りになると、どうしてもおざなりになる部分が出てくる。
隅々まで目が届き、管理できるのが今の石数。うちのどのお酒も飲んでくれる人を大満足させるだけの力量がある」
自信を持って語れるのも、「量より質」を実践しているからだ。