マンガ大賞受賞で話題 『響~小説家になる方法~』の魅力5つ
マンガ大賞を受賞した『響~小説家になる方法~』の魅力を紹介!
2017/03/29 16:30
『ちはやふる』『テルマエ・ロマエ』『3月のライオン』『海街diary』『かくかくしかじか』……ジャンルも作風もさまざまなこのマンガたちの共通点、それはすべて「マンガ大賞」の受賞作であるということ。
この賞は書店員を中心とする各界のマンガ好きが集まり、その年のイチオシ作品を決めるという目的で2008年にスタートしたもの。10回目を迎えた今回、大賞に柳本光晴『響~小説家になる方法~』が選ばれた。
■舞台は「純文学」の世界
小学館「ビッグコミックスペリオール」で2014年に連載が始まった本作の舞台は、中世ヨーロッパでも戦国時代でもない。現代日本の小説の「純文学」という世界だ。(※娯楽小説ではない、芸術としての小説ということ)
出版不況の影響を真正面から受ける中、天才的な文芸の才能を持つ15歳の天才高校生・鮎喰響(あくいひびき)が現れ、文学界を変えていく。
……と、あらすじだけを書いてしまうと「真面目でお硬い作品なのかな?」と思ってしまう人もいそうなので、ここでは本作品の魅力ポイントを5つ紹介したい。
①響の「圧倒的天才感」
なんと言っても、最大の魅力は主人公・響のキャラだ。天才的な文才、小説を見る目を持ちながらも社交性は皆無。それでいて自分の主張を曲げず、面と向かって相手の小説を「面白くない」と言い切る。喧嘩っぱやい一面もあり、空気も読まないので大事な式の最中に、マイクを記者に向かって投げることも。
しかし、その行動には一貫した部分があり、見ていて非常に気持ちがいい。「圧倒的な天才はこうなんだろうな…」と、創作のキャラと思えなくなるほどリアリティに満ちあふれている。
②純文学(作家)の厳しい現実
ピース・又吉直樹が『火花』で芥川賞を受賞したことは、近年の純文学界にあって大きなニュースとなった。だが、純文学という世界は出版不況の中で確実に衰退していっている。
本作でも、それは非常にリアリティたっぷりに描かれている。たとえば、印象的なのは新人賞の選考会のシーンだ。次世代を切り開く才能を見つけるという意味では非常に重要な催しのはずだが、「存在することに意味がある」と売れることを諦めた編集長は、二次選考まで外部に委託しようとする。
また、作家個人もその影響を大きく受ける。新人賞を受賞した作家でも、ほとんどがそれだけでは食べていけず、他の仕事やバイトをしているのだ。彼らの芥川賞にかける想いはエピソードを通じて丁寧に描かれ、読む者の胸を打つ。
③「天才じゃない」人々の葛藤
響が圧倒的天才であるのと対比するように、この作品には数多くの「普通の人」が登場する。そして、響の才能を間近で目撃し、みな大きく動揺、中にはすっぱりとこの道を諦める人も出てくる。
では、そういう人は敗者として描かれているのか? むしろ逆で、たとえば小説家を諦めた女性は後に幸せな人生を歩む。「負けの美学」とでも言えばいいのか、「普通の人々」を決して貶めない作品なのだ。
④幼馴染・椿涼太郎の強烈なキャラ
さて、ここまで純文学の世界について多く書いてきたが、本作の基本的な舞台は高校の文芸部である。そこに所属する響以外の4人のメンバーも個性的で、学園モノとして見ても楽しい。
とくにギャップが大きいのは幼馴染の涼太郎だろう。イケメンでスポーツ万能。コミュ力も高く、響を常に世話している立場なのだが、なぜか響に片想い中。
そして、爽やかな第一印象と裏腹に実際は意外に変態で、彼の部屋は響の写真で埋め尽くされている。また、響との将来設計を勝手に頭の中で構築しており、響のことをあくまで「普通の女の子」と言い切る強情さも。
⑤なぜか担当編集者がナイスバディ
魅力ポイントに挙げるのが少しおかしい気もするが、もし実写化されるなら必ず守ってほしいところなのでしっかり書いておきたい。
また、文芸部の仲間・関口花代子も無駄にナイスバディである。
記者が思う魅力ポイントをざっと挙げてみたが、本作の良さは他にもたくさんある。浅く読んでも深く読んでも面白いので、「純文学? 難しそう…」と思わず、一度手にとってみてほしい。
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(文/しらべぇ編集部・Sirabee編集部)