「校閲」とは一味違う 困惑とトホホ笑い渦巻く伝説の「校正」
2016/11/23 12:00
石原さとみ主演のドラマ『地味にスゴイ! 校閲ガール・河野悦子』(日本テレビ系)で、広く知られるようになった「校閲」というお仕事。
本や雑誌の世界では、その道のプロフェッショナルの担当者が、正しい文章の番人として活躍する中、同じような印刷物でも広告の世界では、少しばかり状況が異なる。
主にクライアント担当者が修正指示を入れる「校正」では、ときに制作や印刷会社の担当者が、どうしていいのかわからなくなるコメントが書き込まれ、それが「伝説」の域にまで達することもある。
■校閲と校正の違い
文章や図版・写真などが、正しく掲載されるように、指示を書き込むという点では「校閲」も「校正」も、大きな枠組みで見ると作業上の違いはない。
ここで理解してほしいのは、校閲がプロの手でその媒体や原稿の特性は考慮しつつ、一定以上の水準で、ブレることなく修正指示がされるのに対し、校正の場合は、確認作業を行う人の立場や主観、“大人の事情”などが入ることが多いということだ。
■言いたいことは、わかる
「ペースとって」
担当のおじいさんには、人が「ここはスペースとって」と言っていたのが「ペースとって」に聞こえていたらしい。
「オレンジ100%で」
担当者は「ジュースじゃない」と呟きながら、そっと「Y100M60」と書き添えた。
カラー印刷の色指定は、C(シアン)M(マゼンタ)Y(イエロー)K(黒・Bkブラック)の掛け合わせを記載する。それぞれの色をパーセンテージで指示するが、「オレンジ」という指定色はない。そっと書き添えたあたりが、切なさを誘う。
■誰か通訳を
「シュッとしたフォントに変更」
アシスタント:「シュッとしたフォントってどんなんで?」
デザイナー:「新ゴUDにでもしとけ、細いヤツな」
アシスタント:「了解!」
しかし、その後しばらくして
「親しみのあるフォントに変更」
アシスタント:「親しみのあるフォントって?」
デザイナー:「そんじゃ、××ゴシックにでもしとけ。ダサめのヤツな」
アシスタント:「了解!」
「ダサめのヤツ」で、OKが出たらしい。
「写真変更 ファイル名:abcdef01.mp4」
それ、動画ファイルです。印刷するの普通紙なんで、再生できません。。。
■そして伝説に
「○巻 000ページのように、肉汁あふれる感じで」
スーパーのチラシの色校正で、たくさんの食品写真に入れられた指定は、人気グルメマンガの巻数とページ数。
しかも延々と、“この描写が、いかに美味しそうか”ってマンガの解説を書かれても…。しかも写真はカラーなのに、マンガはモノクロだし、意味わかんない。
「みんなが北海道に行きたくなるように、してください」
北海道の旅行パンフレットに書き込まれた、写真への指定。いや、それ、そういう写真を撮影して、入稿してくれないと…。指示を書いてほしいんであって、願望を書かれても…困る。
ここまでくると、手も足も出ない。ただなんとなく、探り探り「こんな感じっすか?」と、やるしかない世界。
書籍や雑誌の世界では、校閲の指示のもと整然と直しが進められる一方、広告制作の世界では、今日もどこかで、デザイナーや印刷会社の担当者たちが、こんな校正指示に頭をひねり、困惑と闘っているのだ。
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(取材・文/しらべぇ編集部・くはたみほ)
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