「築地」に美味しさを感じる人は4割 今もベンゼンが基準超えする豊洲移転の謎
築地市場の「豊洲移転問題」が、揺れに揺れている。29日には、東京都による地下水調査で、発がん性物質のベンゼンが環境基準の1.1倍〜1.4倍、ヒ素が1.9倍検出された。
これは、汚染対策の盛り土などが行われた後の調査結果だが、都が「実施した」と発表していた盛り土も一部では実施されていなかったことも問題となっている。
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■7つの汚染物質が環境基準の最大4万倍だった
一部には、「地下水を飲むわけでない」「(原則的に環境基準の10倍とされる)排出基準を目安にすべき」といった声も見られる。
しかし2008年の調査で、エリア全体の36%の土壌・地下水から環境基準を超える有害物質(ベンゼン・シアン化合物・ヒ素・鉛・水銀・六価クロム・カドミウム)が検出。
ベンゼンは環境基準の最大4万3000倍、シアン化合物も最大860倍というすさまじい汚染状況だった豊洲市場の建設予定地。
汚染対策をするとはいえ、なぜこの地に建設が強行されたのか。そして、都民や関係者の不安に対して細心の配慮とフェアな情報公開が求められていた状況にもかかわらず、「盛り土について誤った発表」がなされたのだろうか。疑問は尽きない。
■「築地ブランド」への信頼は厚い
80年の歴史を超える築地市場は、すでのその地名が「ブランド」となっている。
しらべぇ編集部が全国1,365名に調査したところ、「店名に『築地』と入っている店は美味しそうに感じる」と答えた人は、全体の44.3%。
とくに女性は過半数となり、築地ブランドへの信頼が厚いことがわかる。
寿司店や食品を扱う企業にも、社名や店名に「築地」をうたうものは数多い。首都圏在住なら、お正月に必ず流れる「♪築地、入船、江戸の味」というコマーシャルソングは馴染み深いはずだ。
■「豊洲=毒物」イメージの克服は可能か?
一方で、「店名に『豊洲』と入っている店」が美味しそうに感じる人は、わずか6%。
なおこの調査は、29日に都が「ベンゼン・ヒ素の環境基準超え」を発表する前に行なったものであり、汚染対策を行なったにもかかわらず検出される有害物質が豊洲のイメージをさらに押し下げていることは、想像に難くない。
こうした生活者が持つ負のイメージは、移転が実施された後、仲卸や飲食店といった事業者に襲いかかることになる。
ガス工場跡地であり、基準値の数万倍の有害物質が検出されていながら、なぜか強行された豊洲新市場の建設。さらに汚染対策を行なったはずが、なお環境基準を超えるベンゼンやヒ素の問題。
「食の安全・安心」という言葉とは、もはやかけ離れた状態だ。
積み上げられた「築地ブランド」を放棄したあげく、大きなマイナスからスタートとなる豊洲市場は、日本の食文化に禍根を残すことが避けられないだろう。
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(文/しらべぇ編集部・タカハシマコト)
【調査概要】
方法:インターネットリサーチ「Qzoo」
調査期間:2016年9月23日~2016年9月26日
対象:全国20代~60代男女1,365名(有効回答数)
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